38年前に別れた君に伝えたいこと

ドームに映し出される満天の星空を見て何を想う。

都会では、数える事が出来てしまうくらいの星しか見ることが出来なくなった。

プラネタリウムは夜空の本来有るべき姿を映し出してくれる場所だった。

デートコースとして人気があるこの場所は、恋人達にとって非現実世界へと誘う聖地のような気がしていた。


「僕は銀河鉄道が好きなんだよね」

「宮沢賢治の?」

「違うよ、漫画の999の方。
宇宙に散らばる星の中には、地球と同じような惑星があって、きっと人類と似たような生物がいる気がして、望遠鏡を覗くとついつい想像しちゃうんだ」

「私は、望遠鏡を覗くと自分を忘れられるよ、
現実逃避かな、星には夢とロマンがあるから」


プラネタリウムを見終わって館内を一周した後、科学館のすぐ隣の公園で、少しお喋りしてから別れることにした。

彼女の貴重な時間を、余り奪いたくなかったから。

自動販売機で飲み物を買って、公園のベンチに二人並んで腰掛けた。

彼女は、まだプラネタリウムの余韻に浸っている。

「圭くん、あんなに沢山の星、本当に有るのかなぁ」

「都会では見られないけど、空気が綺麗で、周りに灯りがない場所だったら、きっと見えるよ」

「本当の満天の星空、私も見てみたい、
 圭くん、いつか私を連れてってね」

「いいよ」

それが彼女との未来を夢描いた初めての約束だった。
いつかきっと、彼女の願いを叶えてあげたい。
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