38年前に別れた君に伝えたいこと
「友達が見せてくれたの?」
「うん、なんか彼氏自慢してるみたいで嫌だったけど、私もこんなカッコいい彼氏いるよって、皆んなに見せたいし」
次の日曜日に、彼女を家に迎えに行った。
家は知ってても、訪れるのは初めてだった、
なんか緊張する。
呼び鈴を押すと、母親が玄関の戸を開けてくれた。
「あっ 初めまして、君嶋です」
「あなたが、君嶋くん? いつも美幸を支えてくれてありがとね。
美幸は、あなたの話ばっかりなんだから」
母親の声が聞こえたのか、
家の奥から彼女の声がした。
「もうお母さん!
余計なこと言わないでいいからね」
「はいはい、君嶋くん、美幸をよろしくね」
「はい」と返事をして軽く頭を下げた。
「圭くん、お母さん何か変な事言わなかった?」
「美幸をお嫁さんにしてあげてって頼まれた」
「えっ・・・
もう、そんな事言うわけないじゃない!」
彼女は僕の腕を叩いて、そのまま腕を絡めてきた。
今まで遠慮していたのか、大学生になって少し積極的になった気がする、
「美幸ちゃんは、お母さんに何でも話すの?」
「うん、今日は圭くんが手を繋いでくれたとか、抱きしめてくれたとか、ね」
「そんな事まで、お母さんに話すの?」
「だって私の顔を見ては、今日は何かいい事あったでしょって聞くから、ついつい話しちゃうんだ」
彼女は嬉しさが顔に出てしまうらしい。
「キスの話も?」
「それはちょっと言えなかったなぁ、お母さんの顔もまともに見れなかったから」
それでも、娘のそんな様子を見て、母親は気づいていたのではないか。
男には分からない母と娘の関係、
まるで仲のいい友達に相談するみたいに、何でも話してしまう。