38年前に別れた君に伝えたいこと

僕が訊いても、彼女は俯いたまま顔を上げようとしない、

正面にしゃがみ込んで両手を彼女の頬に添えて、

「美幸ちゃん?」

顔を上げようとして拒まれた。

「美幸ちゃん、僕を見て!」

彼女は俯いたまま、
「もう、もう圭くんの顔が見れない!」

「なんで!、僕は此処にいるのに?」


手紙、、手紙になんて?

「美幸ちゃん、手紙に何が書いてあるの!」

「さ・・・さよならって」
言いたくも無い言葉を絞り出したかのような声が、震えていた、、

「どうして! 僕が嫌いになった?」

彼女は首を横に振って、
「・・・大好きだよ、
 出会った頃より、今が一番好き、、」

「じゃあ、何で別れるなんて!」

「圭くんが少しずつ離れて行くのがわかるから、毎日不安で不安で。もう、耐えられないから、、」

「僕は美幸を嫌いになったりしないよ」

「そう信じたいけどごめんね、圭くん、ごめん、、」

彼女の涙を指で拭って、顔から手を離した、

相当な覚悟がある気がする、
もう僕には、何もしてやれないかもしれない。

「美幸ちゃん、、もう、戻れないの?」

彼女は躊躇いがちに、首を

縦に降った。

「そうわかった、もう何も言わないよ、
   駅まで送るから」

二人無言のまま、駅まで歩いた。
たった5分程度の道のりが僕には凄く長く感じられた。
それでも、永遠に辿り着かなければいい、、そう願っていた。
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