38年前に別れた君に伝えたいこと

何も言ってあげられない、
涙に暮れる彼女に、もう何もしてあげられない、

僕はなんて無力で弱いんだろう、
何でこんなに子供なんだろう。

長い沈黙の後、どちらからともなく電話は切れた。


大人になるということは、
今のままでは居られないという事だ。
彼女は今、少女から大人へと少しずつ成長している。
その過程で、何かを得て、そして何かを失う。
それが自分にとって、かけがえのないものだった時、全てを捨てて現実から逃げ出したくなるのだろうか。

しかし、それはすぐに不可能だと気付く。

僕がもう少し大人であれば、彼女のそんな不合理な現実を受け止めてあげられたかもしれない。


青春時代の一番大切なものを失ってしまった。

それから数ヶ月、何度も電話を掛けようとして、

そして諦めた。


もう、離れていく彼女を追いかけるような真似はしたくない。
自分が惨めになるだけだ。


やがて、時が忘れさせてくれるのだろうか。
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