38年前に別れた君に伝えたいこと

ショッピングモールには、ブランド品から生活雑貨まで、色々なテナントが入っている。
とても一つずつ見て廻る時間はないから、見たいショップに目星を付けて廻る事にした。

ところが、
運動不足なのか歳のせいなのか、小1時間ばかり歩いただけで疲れてしまった。

「美咲、お母さん此処で待ってるから1人で行っといで」

「なに? お母さんもう疲れたの?」


椅子に座って休憩したい、、

年配の人達が買い物袋の番をしながら休憩してる。
きっと一緒にお店を回るのがしんどくて、『此処で待ってるから、行ってらっしゃい』って感じかな。

長椅子の一番縁が空いていたので、隣の人に声を掛けて座らせてもらった。

娘は怒りながらも一人でお目当てのショップに行こうとしていた。

椅子に座って一息つくと、
ちょうど向かいに本屋があることに気づいた。

慌てて遠ざかる娘の背中に声を掛けた、
「美咲! 私、本が見たいから別行動ね」

「もう、お母さん
 本なんて何時でも見れるじゃない!」

「近所の個人店は、みんな潰れちゃったの!」


私は、本を読むのが好きだった。

時間をかけて、じっくり一人で本を選びたい。
誰かと一緒だと、何時も急かされて適当に買ってしまって後で後悔するから。

店の中に入ると、沢山の本に囲まれて幸せな気分になる。このインクと紙の匂いが私は大好きだった。

あーぁ、
お金と時間さえあれば何冊でも読んであげるに、、


いったい毎月何冊の本が出版されるんだろう、この中から読みたい本を見つけ出すのは至難の技だと思う。

まずタイトルを見て、気になれば帯に書かれたセールス文句や裏表紙のあらすじ等をチェックする、その中でも特に面白そうな本は、ページをめくって内容をチラ見してみる。

どれもこれも、ありきたりの内容だなぁ。
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