38年前に別れた君に伝えたいこと

2人の会話が聞こえてくる、、


「それは、一体どういう本なんだ?」

「私はまだ読んでないから知らないよ。でもその彼とお母さんの名前が、そのまま本に出てるみたい」

「そんな、人の名前を勝手に出していいのか?」

「だって、他の人が読んでも、実在の人物かどうかなんて判らないよ。例えお父さんが読んだとしても、本に出てくる美幸さんがお母さんだとは絶対に思わないわ」

「うーん、確かにそうかもな」

「だからね、世界中でお母さんにしか分からないから、きっとお母さんが本を読むことを前提にして書かれたラブレターのような気がするんだ」

「ら、ラブレター?」

「うん、きっとお母さん宛てのメッセージが文章の中に隠されている、お父さん気になる?」

「当たり前だろ、俺の女だぞ」

「いつもお母さんに優しくしてれば、
 そんな心配しなくていいわ」

「でも元カレと久しぶりに会って、燃え上がるって結構あるらしいぞ」

「お母さんがそんな事する訳ないじゃない!」

「お前はまだ若いから分からないだろうが、青春時代の恋人ってな、どれだけ年月が経っても忘れないもんさ、俺ですら昔の彼女の事を覚えてるんだから、母さんだってきっと忘れてないさ」

「そんな事絶対ないから!」

「美咲は、何でそこまで言い切れるんだ」

「だって、その人、もう亡くなってるから」

なに?
私は耳を疑った、慌ててドアを開けて寝室を出た。

「美咲! 今なんて、、」

「あっ、お母さん、今の話聞いてたの?」

「、、か、彼は亡くなってるの?」

「ごめん、隠すつもりじゃなかったんだ、私もさっき知ったばかりだから」

ふたりの目も憚らず、私は両手で顔を隠して泣いてしまった。

圭くん、、なんで、、、

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