38年前に別れた君に伝えたいこと
「それは、、私の事じゃないと思います」
「河崎さんって人? 違うわ、私は貴女の事だと思う。
私は小説でしか河崎さんの事を知らないけど、確かに彼女の事は大好きで、ずっと一緒に居たいと思ったかも知れない。
なかなか忘れられなかったのも事実だろうし、
でも、彼が幸せにしてあげたいと思う人は、彼が傍にいたいと思う人じゃないの。
彼に、傍にいて欲しいと願っている人。
彼の事を一途に思っていて、彼がずっと横にいて守ってあげたいと思う人。
私や貴女みたいに」
そうだった、私が泣きそうな気分になると、いつの間にか圭くんは近くに居て優しく手を差し伸べてくれた。
「高瀬さん、彼は自分から女の子に告白した事が無かったのを知ってるかしら」
「えっ、そうなんですか? 知らなかったです、、
でも君嶋くんはモテたから黙ってても女の子の方から寄ってきたんじゃないですか?」
「それもあるかも知れないけど、彼は自分に好意をもってくれる女の子が好きで、いくら見た目が可愛くて好みのタイプでも、その子が自分に気がなければ一切関心を示さない、だから彼の交際はいつも女の子の方からベタ惚れされて始まるの、そうして付き合っているうちにいつの間にか彼の方が夢中になってしまう。私や貴女も、その河崎さんって人もそうだったみたいよ」
「河崎さんの事は聞いたことがあります」
高校一年生の時、同じクラスの矢代くんが河崎さんと小中学が同じの幼馴染で、圭くんを好きになった河崎さんが矢代くんにお膳立てを頼んだって聞いた事があった。
同級生でも10クラスもあれば顔と名前が一致しない人は沢山いた、それさえ無ければきっと出会わなかった2人だったのに、、私は当時矢代くんのお節介を恨んだ事まで思い出した。
「話がそれちゃったけど、、それでね、私が、
『じゃあなんでそんな大切な人と別れたの?』って聞くと、
『僕が、まだまだ子供だったからさ。少しずつ大人になって行く彼女を包み込んであげる包容力が、僕にはまだ無かった。
だから彼女を許すことができずに傷つけてしまったんだ。僕の方が彼女に振られたんだよ』って」
違う、、彼を振った覚えはない。確かに別れを告げたのは私だけど、私の方が苦しんで苦しんでようやく忘れることができたのに、