38年前に別れた君に伝えたいこと
「『でも、圭ちゃん、私と出会った頃のあなたは、すでに大人だったわ。だから私はあなたに着いて行きたいと思った』
『彼女のおかげで大人になれたんだ、あの失敗が無かったら、君にも同じ過ちを犯したかもしれない』
『私は、あなたと出会う順番が後でよかったのね』
『そうだよ』って
それでも納得できない私は、
彼に更に意地悪な質問をしたの、
『もし私と彼女が、圭ちゃんと出会うタイミングが反対だったらどうなってた?』
『もちろん、彼女と同じように君を幸せにすることはできなかったし、今僕の隣にいるのは君じゃなくて彼女だと思う』
って、きっぱり言われてしまった。
私が項垂れてしまうと、彼は私の後ろに座って優しく抱きしめてくれた。
『もう過去の話さ、今は麻由ちゃんを選んで、一生君の笑顔を守るって誓ったから。女遊びもしないし、不倫もしない。僕が信じられない?』
彼の甘い言葉に消されて、その場は静まったけれど
高瀬さん、もし、私より貴女の方が後で彼と出逢ってたら、私と貴女の立場は反対だったかも知れない」
本当に、、
私は両手で顔を隠して、涙に耐えていた。
たった一、二年の話だ、、
圭くん、もう少し大人になってから出逢っていたら私達は幸せになれたかな、、
・・・・時の悪戯だね、
「今の話が、彼が貴女に伝えたかった事だと思う、、
それと、もう一つね、、
私から貴女に伝えたい事があるの」
「奥さんからですか?」
「ええ、私はあの小説を読んで気づいた事があるの、彼は私の泣き顔だけは見たくないって書いてあったでしょ、でもね30年以上も一緒に居ればそんなシーンは何度もあったわ、その都度彼はその言葉を口にして、それまで以上に優しくなった。
彼がそう考えるようになったきっかけを考えてみたとき、貴女が彼との別れの時に見せた涙に辿り着いたの」