38年前に別れた君に伝えたいこと
「着替なんてないし、どうするの?」
「ごめん、やりすぎちゃったね、どうしようか?」
「とりあえず、風邪引くから車に戻ろう、毛布が一枚あったはずだから」
「うん、、あっ圭くん私忘れてた、ちょっと待って」
「なに?」
彼女は波打ち際まで行くと両手を口に添えて叫んだ。
「やっぱり、私は圭くんが、だ・い・す・き!」
「美幸ちゃん、、サーファーの人に聞こえるよ」
「聞こえたっていいの、別に恥ずかしくないし」
40年も経てば羞恥心も克服できるか、、
車に戻って、とりあえずエアコンで乾かす事にした。
「塩水だから、髪の毛もばさばさだよ、このままじゃ何処にも行けない、どうする、帰る?」
「うん、もっと一緒に居たいけど、息子も帰ってくるから帰ろかな」
彼女を車から下ろす時、言っておかなければならない事を思い出した。
「家の電話はもう使わないから解約するんだ、今の世の中携帯が有れば充分だから」
「そっか、携帯の番号は教えてくれないのね?」
「知らない方がいいと思う。まぁ家は変わってないから君がその気になれば会えるけどね」
お互い携帯の番号は知らない、唯一の接点は年一回七夕の日の一時間だけになった。
「もし、奇跡が起きて君と再び出会う事ができたなら、残りの人生をかけて君を幸せにする」
軽く抱きしめて、指切りをした。
そう約束して、二度目の長い別れが訪れた。
この想いが何処へ辿り着くのか、
その日が本当に来るのか、
今の二人にはわからない。