再会から始まる両片思い〜救命士の彼は彼女の心をつかまえたい〜
「美味しい……」
私はふぅっと一息、冷ましてから改めて口にした。
お酒の後で飲む温かい飲み物はなんだか気持ちを落ちつけてくれる。
夏目さんも私が飲むのを見てから飲み始めた。
同じ大きなカップは彼が手に取ると小さく見えてしまい、彼との体格差を改めて感じた。
「夏目さんって背の高さどのくらいなんですか?」
「確か190だったかな」
大きい……。
160の私が見上げるくらいなので高いとは思っていたが190だったなんて驚いた。
「バスケしてたら伸びたんだ」
「バスケもしてたんですね」
「あぁ。ミニバスから始めて中高とバスケ三昧。だから救命士になりたいと親に言ったら驚かれたよ。勉強してないのに大学に受かるわけないって」
バスケに明け暮れた学生時代だったんだろうなぁと想像がつく。何度も会っているうちにわかる彼の真面目な性格だ。きっと部長とかしちゃってたんじゃないのかな、なんて思う。
「私はテニスしてました。日焼けして真っ黒でしたよ」
「のどかちゃんはテニスか。似合いそうだなぁ」
「成績はイマイチでしたよ。でも楽しかったなぁ」
「体を動かすって楽しいよな。また学生の頃に戻りたいよ」
私も頷く。
大人になるとあんなに夢中になってやれない。でもそのことにあの頃は気が付かなかった。あの頃はあの頃なりに頑張っていたけれど、大変だという気持ちの方が強く、楽しめてはいなかった。今ならあの努力も楽しめる気がする。
「仕事に追われてなかなか趣味に時間を費やせてないので恥ずかしいです。その点で夏目さんはウィンドサーフィンしたりしていてすごいと思います」
「俺も仕事を始めた頃は時間に追われ、身体も慣れなくて休みの日は寝てばかりいたよ。でもある時仕事ばかりでいいのかと思ったんだ。仕事で疲れるけど、気分転換もできずに次の仕事に行くって不健康だなって」
「分かる気がします。嫌なことや大変なことがあっても仕事に行かなきゃならない。そんな時、私の息抜きってなんなんだろうって。仕事だけで私の人生が終わるんじゃないかって不安に思う時すらあります」
苦笑いを浮かべる私に、彼は同意するように頷いた。
「そう、それだよ。このまま俺の人生終わるんじゃ、と思ったんだ。だから何かやりたい、と思った時に出会ったのがウィンドサーフィン。バスケも考えたけど1人でできないから周りを俺のシフトで振り回しかねないだろ?」
確かに私たちの仕事は不規則。必ず土日に休みが来るわけではない。下手したら当分休みが当たらないだろう。
「でもそれで自分に合う趣味を見つけられるなんて羨ましい。私も何か考えないと、あっという間におばあちゃんになっちゃう」
「まだ20代だろ? これから、これから!」
「あっという間ですよ。看護師になってこの5年だってものすごく早かった。気がついたら定年退職しちゃいそう」
ハハハ……と彼は笑い声を上げるがみんなが部屋で寝ているので声を抑えている。
「なら一度、一緒に行ってみない? 山梨なら湖なら近いし、美味しいほうとうもあるから食べて帰ってこないか」
ふたりで?
いつもはみんなで集まっているのに、この流れだとなんとなく違う気がする。
胸がドキドキと高鳴り始める。
行きたい。
でも彼は本気なのかな?
たまたま話を振っただけで迷惑ではない?
すぐに答えない私に夏目さんが頭をかきながら、「ごめん、迷惑だったよな」と小さな声で言った。
私はここで言わなければ後悔する、と直感に言った。
「行きたい!」
私の大きな声に彼は驚いていたが、人差し指を口に当て、シーっと言った。
私もハッとして自分の口を両手で塞いだ。
私はふぅっと一息、冷ましてから改めて口にした。
お酒の後で飲む温かい飲み物はなんだか気持ちを落ちつけてくれる。
夏目さんも私が飲むのを見てから飲み始めた。
同じ大きなカップは彼が手に取ると小さく見えてしまい、彼との体格差を改めて感じた。
「夏目さんって背の高さどのくらいなんですか?」
「確か190だったかな」
大きい……。
160の私が見上げるくらいなので高いとは思っていたが190だったなんて驚いた。
「バスケしてたら伸びたんだ」
「バスケもしてたんですね」
「あぁ。ミニバスから始めて中高とバスケ三昧。だから救命士になりたいと親に言ったら驚かれたよ。勉強してないのに大学に受かるわけないって」
バスケに明け暮れた学生時代だったんだろうなぁと想像がつく。何度も会っているうちにわかる彼の真面目な性格だ。きっと部長とかしちゃってたんじゃないのかな、なんて思う。
「私はテニスしてました。日焼けして真っ黒でしたよ」
「のどかちゃんはテニスか。似合いそうだなぁ」
「成績はイマイチでしたよ。でも楽しかったなぁ」
「体を動かすって楽しいよな。また学生の頃に戻りたいよ」
私も頷く。
大人になるとあんなに夢中になってやれない。でもそのことにあの頃は気が付かなかった。あの頃はあの頃なりに頑張っていたけれど、大変だという気持ちの方が強く、楽しめてはいなかった。今ならあの努力も楽しめる気がする。
「仕事に追われてなかなか趣味に時間を費やせてないので恥ずかしいです。その点で夏目さんはウィンドサーフィンしたりしていてすごいと思います」
「俺も仕事を始めた頃は時間に追われ、身体も慣れなくて休みの日は寝てばかりいたよ。でもある時仕事ばかりでいいのかと思ったんだ。仕事で疲れるけど、気分転換もできずに次の仕事に行くって不健康だなって」
「分かる気がします。嫌なことや大変なことがあっても仕事に行かなきゃならない。そんな時、私の息抜きってなんなんだろうって。仕事だけで私の人生が終わるんじゃないかって不安に思う時すらあります」
苦笑いを浮かべる私に、彼は同意するように頷いた。
「そう、それだよ。このまま俺の人生終わるんじゃ、と思ったんだ。だから何かやりたい、と思った時に出会ったのがウィンドサーフィン。バスケも考えたけど1人でできないから周りを俺のシフトで振り回しかねないだろ?」
確かに私たちの仕事は不規則。必ず土日に休みが来るわけではない。下手したら当分休みが当たらないだろう。
「でもそれで自分に合う趣味を見つけられるなんて羨ましい。私も何か考えないと、あっという間におばあちゃんになっちゃう」
「まだ20代だろ? これから、これから!」
「あっという間ですよ。看護師になってこの5年だってものすごく早かった。気がついたら定年退職しちゃいそう」
ハハハ……と彼は笑い声を上げるがみんなが部屋で寝ているので声を抑えている。
「なら一度、一緒に行ってみない? 山梨なら湖なら近いし、美味しいほうとうもあるから食べて帰ってこないか」
ふたりで?
いつもはみんなで集まっているのに、この流れだとなんとなく違う気がする。
胸がドキドキと高鳴り始める。
行きたい。
でも彼は本気なのかな?
たまたま話を振っただけで迷惑ではない?
すぐに答えない私に夏目さんが頭をかきながら、「ごめん、迷惑だったよな」と小さな声で言った。
私はここで言わなければ後悔する、と直感に言った。
「行きたい!」
私の大きな声に彼は驚いていたが、人差し指を口に当て、シーっと言った。
私もハッとして自分の口を両手で塞いだ。