再会から始まる両片思い〜救命士の彼は彼女の心をつかまえたい〜
***
のどかちゃんと何故かすれ違っているような気がしてならない。
そもそも一緒に出かけた時はいい雰囲気だったような気がしていた。
ただ、彼女があまりに危なっかしくて正直なところヤキモキしていた。
インストラクターの人とマンツーマンで教わり、親しげになっていた。ふたりで気さくに話す姿は面白くなかった。
その後も彼女が思いもよらず人命救助した後、濡れて下着が透けている姿をみんなに見られてしまった。それさえも対して気にしていない彼女はしっかりしているんだか、危なっかしいのか分からない。
その上槙野も彼女のことを気に入ったようだ。裏表のないあいつのことだ。あの様子を見ていると本当に彼女を気に入ったのだろう。牽制しておいたがあいつはどこまでわかったのか……。あの日いちにちで本当に頭が痛くなった。みんなに彼女が魅力的だと気が付かれ、奪われたらと思うだけで落ち着かない。
あの後も欠かさずこまめにメッセージのやり取りをするようにしていた。内容はよくあるものでも、彼女とのやりとりが楽しくて心が満たされていくのを感じた。
久しぶりに約束できた彼女との食事だったが、駅で待ち合わせしたのが間違いだった。
遠くから彼女の姿が見え、急いで向かっている途中バランスを崩したのが見えた。
あ、転ぶ! と思った瞬間近くにいた男性に支えられていた。
慌てて駆け寄るがふたりはなかなか離れない。
ようやく到着すると、それは見た目のいい男性に助けられていた。
彼女も男性を見つめていて不愉快だった。
思わず彼女を引き寄せるとお礼を言いすぐにその場を去った。
彼女が見つめる先にあの男性がいたのが心底面白くない。自分が彼女を支えてあげたかったと心の底から思い、悔しさからその後の会話は待ちに待った食事なのに弾まなかった。
彼女も俺との食事に嫌気がさしたのか、あの日はすぐに帰ってしまった。
すぐにあの時の態度を反省し、いつもと変わらずメッセージを送るが、彼女からの返信はそっけないものだった。
日に日に思いは募っているのに、何もできないもどかしさからどうしていったらいいのかわからなくなっていった。
そんな時、久しぶりに原島総合病院への搬送にあたった。
外来の扉の外で立つ彼女が見えた瞬間、俺は仕事中にも関わらず目を奪われた。
そんな俺のよこしまな心を見られたくなくて、一度深呼吸をして冷静さを取り戻そうとした。仕事に真剣な彼女には俺のそんな態度を絶対に見せたくなかった。
彼女は思った通り俺たちを見てもアイコンタクトを取るわけでもなく、仕事として受け入れていた。テキパキとした対応にまた目が追ってしまいそうになるが、そんな俺に失望してほしくなくて早々に引き上げた。
元の関係に戻りたい。
彼女が誰かの腕の中にいるのは見たくない。
彼女を助けるのは自分でありたいといつのまにか強く願うようになっていた。
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