再会から始まる両片思い〜救命士の彼は彼女の心をつかまえたい〜
仕事は毎日変わることなくやってくる。年末に向けて病院も色々と忙しい時期だ。
そんな忙しさに助けられるように私は没頭していた。ふとした時間があるとつい夏目さんのことを考えてしまうので、仕事ばかりしていた。
今日も本当は休みだったが、体調を崩した後輩が代われる人を探していたので私が当直を交代した。

でも流石に疲れが溜まってきているのは自覚せざるをえなかった。救急病棟にしても救急外来にしても目の回るような忙しい職場。そんな中、私は彼のことが頭をよぎらないよう必死で意識の中から彼を消そうとして働き尽くめになっていた。
それでも救急隊を見かけるたび、夏目さんがいないかと、つい目で探してしまう自分が情けなかった。
彼にはちゃんと彼女がいるのに、ふたりの幸せを奪うようなことは出来ない。
諦めるしかないと呪文のように繰り返していた。

ホットラインから搬送受け入れの打診がきた。

『交通外傷の受け入れは可能でしょうか。胸を強打したようで息苦しさを訴えています。頭部からの出血も見られます』

「確認します」

近くにいた外科の医師に確認をとりつつ、ベッドの確保をした。

「お待たせしました。受け入れ可能です。搬送お願いします」

そう伝えると、無線の向こうから安堵した声が聞こえてきた。
受け入れが決まりバタバタと準備が始まったが私は別の患者を対応しており救急車の対応はできなかった。
どうやら肺損傷をしていたようですぐにオペ室へと移動して行った。

ようやく勤務を終え、病院の外に出る頃にはお昼近くになっていた。
疲れた……。
肉体的にはもちろん、精神的にもクタクタになっていた。
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