再会から始まる両片思い〜救命士の彼は彼女の心をつかまえたい〜
「乾杯」
ようやく店に入り、ビールが届くとグラスを合わせた。
このメンバーで飲むのは久しぶりだね、と話に花が咲く。付き合い始めたふたりを揶揄うように話が盛り上がる。突っ込まれたふたりは顔を見合わせては困ったように笑い合い、微笑ましい。
和気あいあいとした雰囲気の中、他愛のない話がいつまでも続くがみんなの掛け合いが楽しくて笑いが止まらない。久しぶりに心の底から楽しいと思えた。
22時を回り、そろそろ帰ろうかとみんなで駅へ戻った。
紗衣ちゃんと加藤くんはこのまま一緒に帰るらしく、一緒に改札を通り抜けて行った。加藤くんの手が紗衣ちゃんの腰のあたりにそっと添えられていて、なんだかすっぽり腕の中に収まっているよう。見ているとなんだか羨ましくなってしまう。大切にされているんだなぁと周りから見ても分かる。そんなふたりの姿を見ていたら夏目さんが後ろから声をかけてきた。
「もう遅いし送るよ」
「え?」
「あ、裕さんが送ってくれるなら安心ですね。それじゃ……」
そう言うと橋口くんは改札を通り、別のホームへとむかっていってしまった。
「大丈夫ですよ」
「いや、心配だから送るよ」
いつもより少しだけ強引な夏目さんは私の手をパッと掴むとエレベーターへ歩き出した。
ホームで電車を待つ間も繋がれた手は離れない。どうしてこんなことするの? さっきまでの楽しかった気持ちは消え、胸が熱く締め付けられるように苦しくなる。
彼の顔をチラッと見ても無表情で何を考えているのかわからない。
ふたりで電車が来るのを沈黙のまま待った。
終電間近の混んでいる車内、揺れるたびに夏目さんの体にぶつかってしまう。夏目さんは私の背中に手を回し、腕の中に包み込んでくれているようでドキドキしてしまう。心臓が飛び出してきそうなくらいに鼓動を感じる。そんな中、彼のにおいが私の鼻をくすぐる。一緒に出かけた時に嗅いだこの匂い。柑橘系の爽やかで、なんだかホッとするような香りについ私の手は彼のコートをそっと少しだけ掴んでしまった。混んだ車内で彼には気が付かれていないだろう。電車の中にいる今だけでも彼に触れていたい、と自然と手が伸びてしまった。
ようやく店に入り、ビールが届くとグラスを合わせた。
このメンバーで飲むのは久しぶりだね、と話に花が咲く。付き合い始めたふたりを揶揄うように話が盛り上がる。突っ込まれたふたりは顔を見合わせては困ったように笑い合い、微笑ましい。
和気あいあいとした雰囲気の中、他愛のない話がいつまでも続くがみんなの掛け合いが楽しくて笑いが止まらない。久しぶりに心の底から楽しいと思えた。
22時を回り、そろそろ帰ろうかとみんなで駅へ戻った。
紗衣ちゃんと加藤くんはこのまま一緒に帰るらしく、一緒に改札を通り抜けて行った。加藤くんの手が紗衣ちゃんの腰のあたりにそっと添えられていて、なんだかすっぽり腕の中に収まっているよう。見ているとなんだか羨ましくなってしまう。大切にされているんだなぁと周りから見ても分かる。そんなふたりの姿を見ていたら夏目さんが後ろから声をかけてきた。
「もう遅いし送るよ」
「え?」
「あ、裕さんが送ってくれるなら安心ですね。それじゃ……」
そう言うと橋口くんは改札を通り、別のホームへとむかっていってしまった。
「大丈夫ですよ」
「いや、心配だから送るよ」
いつもより少しだけ強引な夏目さんは私の手をパッと掴むとエレベーターへ歩き出した。
ホームで電車を待つ間も繋がれた手は離れない。どうしてこんなことするの? さっきまでの楽しかった気持ちは消え、胸が熱く締め付けられるように苦しくなる。
彼の顔をチラッと見ても無表情で何を考えているのかわからない。
ふたりで電車が来るのを沈黙のまま待った。
終電間近の混んでいる車内、揺れるたびに夏目さんの体にぶつかってしまう。夏目さんは私の背中に手を回し、腕の中に包み込んでくれているようでドキドキしてしまう。心臓が飛び出してきそうなくらいに鼓動を感じる。そんな中、彼のにおいが私の鼻をくすぐる。一緒に出かけた時に嗅いだこの匂い。柑橘系の爽やかで、なんだかホッとするような香りについ私の手は彼のコートをそっと少しだけ掴んでしまった。混んだ車内で彼には気が付かれていないだろう。電車の中にいる今だけでも彼に触れていたい、と自然と手が伸びてしまった。