めぐり愛
「こばと園?・・・施設の?」
「はい。」
こばと園、私のいた施設は大きくこのあたりじゃ有名だ。
何素直に言ってんだろ。
「あの・・・大丈夫ですから。もう構わないでください。」
「こんな時間に、こんなとこにいるってこては帰りたくないのか?」
帰りたくないよ。
あんな所には。
黙ってしまった私への男の視線を感じるが、それ以上私は言葉を発することができなかった。
何て返せば良いのか分からなかったんだ。
「うち来るか?」
「は?」
男の言葉に素っ頓狂な声を出してしまった。
そんな私に
「うち、すぐそこ。」
と言った男はとても優しい顔をしていた。
でもほんの数分前に会った知らない男に着いて行くなんて、無理だろ。
しかも全くと言っていいほど、異性と話したことのない私にとってあり得ない。
頭の中で色々考えてまた黙ってしまった私。
「怪我してる女に何もしねえよ。ただ、ここにいてどうする?手当てしてやるから。」
手当て・・・か。
こんな汚い身体なんていらないのに。