めぐり愛

「いらないんです。こんな汚い身体・・・」

無意識に口から出た言葉だった。



わたしの言葉に二人の間に沈黙が流れる。



このまま立ち去ってくれないかな・・・なんて思う私にかけられたのは想像していなかった言葉だった。

「じゃあ尚更だな。うちに来い。」

何言ってるの?

「お前死にたいのか?」

・・・死にたい?
私、死にたいの?
死・・・私の中にふっと蘇った父の最後の姿。
背中に寒気が走った。

「ほら。」

男が立ち上がり私の前に屈む。

「乗れ。そんな身体じゃあ歩けないだろ。」

動くことも、喋ることも出来ない私を動かしたのは

「死にたくないなら、乗れ。」
男の言葉だった。



引き寄せられるように男の背中に手を伸ばす。
そっと男の首に手を回す。
と同時に男が立ち上がった。

「お前軽いな。飯食ってんのか?」
そう言い男はフッと笑った。

歩き出した男に身を預ける。
男が一歩一歩足を進める度に、心地よい振動を感じる。

人の温もりを感じるなんて何年ぶりだろう。



いつしか私は意識を手放していた。

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