めぐり愛
【闇の隙間】
・安らぎ
ズキッと腹部に走る痛みに目を覚ました。
「いったぁ・・・っ」
目を開けるとそこに映るのは見たことのない景色。
部屋であることは分かる。
六畳程の部屋で、あるのは私の寝ているベットと床に敷かれた布団。
それにタンス、無造作に置かれた服や雑誌。
ボーッと部屋を見回していると、ガチャと扉の開く音がし男が入ってきた。
私が目覚めていることに気が付いていないのか、寝癖であろう頭をガシガシ掻きながら欠伸をしている。
そうか、この男の部屋か。
男がフッと私に視線を移してきた。
「おぉ。目、覚めたか。」
「はい。」
返事をして起き上がろうとする私に
「まだ横になっとけ。痛むだろ?」
「ぁ・・・はい。」
男はそっと私のいるベットの横に座った。
「名前は?」
「名前?」
「お前の名前。」
そっか、名前すら知らなかった。
「蘭・・・宮下 蘭です。」
「蘭・・・か。俺は相馬 春樹。」
「・・・春樹・・・さん」
「歳は?」
「十五です。」
「十五ってことは高一?」
「いえ、まだ中三です。」
「中三かぁ〜中三には見えないな。えっらい落ち着いてる。」
「そうですかね。自分じゃ分からないですけど。」
「まぁそうだろな。」
「春樹さんは?いくつなんですか?」
「俺は十八。」
「高校生?」
「いや、もう卒業した。今は働いてる。」