もう、オレのものだから〜質実剛健な警察官は、彼女を手放さない〜

「帰りたく、ないんです。家には彼との思い出があり過ぎるから。二股を掛けるような彼でも、好きだったから……」


言いながら、ポロリと涙が溢れた。

これは、ちゃんと自覚があった。


……ああ、どうしよう。やっぱりまだ、笑い話には出来そうにもないらしい。悔しいなぁ……。

掴まれていない方の手で慌ててゴシゴシと目を擦る。


「……分かりました。じゃあ、オレが葉菜先生を拾っていきます」

「……え?」


一瞬、私は自分の耳を疑った。今犬飼さん、拾って行くって言った?


「捨てられた葉菜先生を、オレが拾っていく。このままここにいたら本当に風邪を引いてしまう。ヤケ酒でもからみ酒でも元カレ宛ての罵詈雑言でも何でも付き合いますから、とりあえずオレの家に行きましょう」

「えっ⁉︎いや、でも……!」

「帰りたくないんですよね?」

「は、はい……」

「どこか、居酒屋とかに行っても良いですけど、そんな明るくて賑やかな所で飲む気分でもないでしょう?」

「は、はい……」

「それにオレは葉菜先生も知っての通り、警察官だ。安全、安心の象徴だと思いますけど」

「で、でも犬飼さん、彼女とかは……」


こんなに格好良い人だ、いてもおかしくはない。

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