もう、オレのものだから〜質実剛健な警察官は、彼女を手放さない〜
部屋に着いた時、あまりにも身体が冷え切っていた私を心配して、犬飼さんはお風呂まで提供してくれた。

普段なら一人暮らしの男性の家になんて決して一人で行かないし、ましてやそこでお風呂を借りるなんてもっての外。だけど犬飼さんは安全、安心の象徴である警察官で、私には手を出さないと誓ってくれていて。

何より暖房の効いていた部屋でもガタガタ歯が鳴るくらい寒くてどうしようもなかった私は、恥も外聞もかなぐり捨てて、お言葉に甘えてお借りすることにした。

私には随分大き過ぎたけれど、スウェットの上下まで借してくれて、今や完全なるリラックススタイルでヤケ酒させてもらっている。


多分、ずっと同じ話ばかり繰り返していたと思う。

二股はひどいということと、付き合っていた頃、嫌われるのが怖くて彼に言えずに我慢していたことや、彼との思い出。

なかなか会えなかったとはいえ一年半は付き合っていたのだ。それなりに思い出はあって、それらを吐き出すことによって私は光司さんとのことを昇華しようとしていた。


本来こういう時、こうして吐き出させてもらう相手は高校時代や保育の専門学校時代の親友とかのはずなのに、成り行きとは言えこうして付き合ってくれている犬飼さんにはもはや感謝しかない。
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