もう、オレのものだから〜質実剛健な警察官は、彼女を手放さない〜
でもそれを自覚してしまった途端、頭がぐらんぐらんと揺れ出してついには視界もゆらゆらと波打ち出す。吐き出す息もなんだか熱い。
さっきまでは平気だったのに、熱ってどうして自覚すると急にいろいろいっぺんに症状が押し寄せてくるんだろう……。
身体が全く言うことを聞いてくれなくなって、私を寝かせようとする犬飼さんに抵抗することはもう出来なかった。熱測ってみて、と体温計を渡されて、素直に脇の下に挟む。
昨日から、私は犬飼さんに迷惑を掛けてばかりだ。
「ごめんなさい……」
申し訳ないやら情けないやら。複雑な感情のこもったごめんなさいを熱い吐息に乗せて押し出せば、犬飼さんはふ、と柔らかく表情を解して私の頭をポン、と優しくひと撫でしてくれた。
「謝ることは何もない。心が弱っている時にあんな寒空の下にずっといたんじゃ熱も出るだろう。昨日葉菜先生を拾っておいて良かった。今日は一日ここでゆっくり療養していけば良い」
「でも、犬飼さんに移したら……」
「平気だ。身体はそれなりに鍛えているからな」
……本当に、この人はどこまでも優しい人だ。