もう、オレのものだから〜質実剛健な警察官は、彼女を手放さない〜
その時、ピピピと測定終了を告げる音が鳴り、体温計を取り出してみればそこには三十八度と表示されていて、高いな、と犬飼さんの眉間にゆっくりと皺が寄った。
「薬を飲む前に、スープなら飲めるか?」
そう言うなり犬飼さんはキッチンへ行き、しばらくしてスープが入っているらしいお皿を手に戻ってきた。
コンソメの優しい香りが立ち上るそれは、細かく刻んだキャベツやにんじん、じゃがいも、ベーコンなどが入っていて、とても美味しそうだった。
「犬飼さんが作ったんですか?」
「ああ。一人暮らしも長いからな。簡単な物なら作れる。まぁそう頻繁には作らないが」
ギシギシ軋む身体をゆっくりと起こすと、犬飼さんがあまりにも自然にスプーンでひと匙掬ったスープをそのまま私の口に運ぼうとするから慌てて止める。
「じっ、自分で食べられます……!」
「あ、ああ、悪い。うち、下に弟が二人がいて昔からよく面倒見させられてたんだ。だからその感覚でつい」
バツの悪そうな顔をした犬飼さんがちょっと可愛くて、スープのお皿を受け取りながら少し笑ってしまった。