もう、オレのものだから〜質実剛健な警察官は、彼女を手放さない〜
でも子供達に話しかけられた時には必ずしゃがんで目線を合わせてくれたり、交番にやって来る人達に真摯に対応している彼を見ている内に徐々にその苦手意識は薄れていって。
ようやく交わす言葉にもぎこちなさがなくなって来たと思っていたのに、一ヶ月前のとある出来事から、桜の蕾が少しずつ膨らんで開花へ向けて変化していくように、私の中での犬飼さんへの気持ちが少しずつ予想外の方向へ変化してしまったせいで、前とは違う意味でぎこちなくなってしまった。
「…今日は松並(まつなみ)公園ですか?」
「は、はい!子供達のリクエストで……」
「そうですか。気をつけて」
「き、気をつけます……!」
ちなみに犬飼さんだから"犬のお巡りさん"。
子供達が付けたあだ名なのだけれど、犬は犬でも見た目が大型のシベリアンハスキーみたいなシャープな犬飼さんにはちょっと可愛過ぎるそれを聞く度に、少し笑いそうになってしまうのは内緒だ。
だけど、そんなあだ名を若干面食らいながらもするりと受け入れてくれた彼は優しい人で。
だからあの時はただ私を放って置けなかっただけで、彼にとってあれはやっぱり、特別なことでも何でもなかったんだと思う。
現にあの出来事の前と後で、彼の私に対する態度は何一つ変わらないのだから。