もう、オレのものだから〜質実剛健な警察官は、彼女を手放さない〜
「あなた達にも日々の癒しは必要だものねぇ。特にこの子の癒し効果と言ったらもう、ね?」
ちらりとこちらを見やってふふふ、と意味深にほくそ笑んだ聡子先生に、「うんうん」と嬉しそうに頷く鶴咲さんと、いつも通りの無表情ながらもなぜかそっぽを向いて制帽を正している犬飼さん。
一方の私は"この子"?"この子達"、ではなくて?言い間違いかな?なんて頭にハテナを浮かべつつその様子を眺めていたのだけれど。
「せんせー、いこー?」
奏多(かなた)くんが繋いでいた私の手をクイ、と引いたので、そんな些細な疑問はすぐに消え去った。
「あっ、そうだね、行こっか!」
「ああ、引き止めてごめんね。じゃあちびっ子達、たくさん遊んでおいで!」
「うん!バイバーイ!」
「またねー!」
各々が元気に返事をして二人に手を振る。
「それじゃあ、いってきます」
「ああ。気をつけて」
私もペコリと頭を下げ犬飼さんから二度目の気をつけてを頂いたところで、二人に見送られながらみんなで再び松並公園を目指して歩き出したのだった。
ーー犬飼さんはあの日のことを、どう思っているのだろう。
あれ以来どうしても考えてしまうけれど、やっぱりあれは、あくまでいち警察官としての延長線上にある優しさだったのだと思う。
だってあの時、犬飼さんは最初に言っていたじゃないか。職業柄、葉菜先生を放って置くことは出来ないのだと。
それなのにその優しさに意味を求めようとしてしまう私は、とても滑稽だ。
……あの時はまさか、自分がこんな気持ちになるなんて思ってもみなかった。