人間オークション       ~100億の絆~

Final episode

「妊娠……?」
「2か月前から麗亜が体調をくずしていたらしい。僕も咲月も忙しくて気が付かなかったが命(みこと)が教えてくれた。命(みこと)、麗亜は最近吐いてることが多いんだよな?」
「うん……鶏肉を食べたときも気持ち悪いって言ってたし、1日に何回もトイレに入ってるから心配で……。」

「どちらもおそらく妊娠の症状だ。麗亜が吐いているのはつわりと言って、妊娠してから起こる症状だ。気持ち悪くなったり食欲がなくなったりする。においに過敏にもなるから相当我慢して家事も行ってたはずだ。」
「妊娠したら…どうなるの?」

「妊娠したらね、お腹の中に赤ちゃんができるのよ。9か月から10か月…お腹の中で少しずつ大きくなっていって生まれてくるの。」
「麗亜さんと咲月さんに…家族ができるってこと…?」

「そうね、今、私のお腹の中には咲月との赤ちゃんがいる。生まれてきたら、命(みこと)の家族にもなるのよ。」


「麗亜、どうする?」
「私は産みたいです。咲月との間にできた大切な子だもの。」

「咲月、お前はどうする?」
「俺は……まだ答えが出せない。こんなこと考えてなかった。ちょっと考える時間が欲しい。」

そう言うと咲月さんはリビングを出て行ってしまった。麗亜さんを見るとぽろぽろと涙を流している。

「麗亜、もう一度聞く。その赤ん坊をどうしたい?」

「私は…どんなことがあっても産みます。もし咲月が受け入れてくれなくても…お別れをすることになるとしても、この子だけは産みたいの。」

「それはどうして…?」

「私は、咲月のことを――」
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