人間オークション       ~100億の絆~
「咲月さん、怒ってる?」
「いや、怒ってない……怒ってるとか怒ってないとかそういう問題じゃない。俺らは…俺らには愛なんてないんだよ。命(みこと)と且功といたいから付き合った。それだけの関係だ。それなのに子供ができたなんて……。愛のない間にできた子供なんてかわいそうだろ。」

「なんでかわいそうなの…?」
「だって、愛が無いんだぞ。生まれてきても愛されないんだぞ。できたから生まれた。そんなのあんまりだろ。」

「命(みこと)、少し咲月にも休む時間を与えてやれ。」

「私、どうやったら子供ができるとかまだ分からないけど、麗亜さん、言ってたよ。子供を産むって言うことは家族ができること。咲月さんも本当は麗亜さんと家族になりたいから赤ちゃんを作ったんじゃないの?本当に愛がないなんて私はそんなの信じないよ。本当に私たちのためだけに付き合ったんなら、なんであんなに幸せそうだったの?どうしてあんなにいつも笑ってたの?咲月さんの心の中に聞いてみて。麗亜さんのこと、大事に思ったことは本当になかったの?一緒にいて幸せだと思えたことはなかったの?」
「俺は……俺は……。」

「私たちのために付き合ってるだなんて言って自分の気持ちを誤魔化さないで。ちゃんと咲月さんは、咲月さんの心に従って。麗亜さんを受け止めてあげて。麗亜さんの気持ちを。」
「麗亜の……気持ち…?」

「命、もうやめろ、それ以上は2人の問題だ。」
「いや、やめたくない!ちゃんと咲月さんには知ってほしい!後で麗亜さんにたくさん怒られてもいい。嫌われてもいい。それでも、私は咲月さんにちゃんと知ってほしい。麗亜さんは、咲月さんのことを愛してるんだって!」

「麗亜が…俺を……?そんなこと……。」

「まだわからないの!?愛してるから赤ちゃんを産みたいんだよ!愛してるから、一緒にいたいんだよ!咲月さんのことが大好きなんだよ。」

「咲月……命(みこと)が今言ったことは本当だ。麗亜はお前のことを愛してる。それは麗亜が僕たちに言ったことだ。僕もお前も恋愛とか家族とかそういうものを信じてこられる環境じゃなかった。だけど……自分たちの育った環境がこの世の全てじゃない。僕たちみたいに辛い思いをする人もいれば、幸せになれる人もいる。麗亜はその幸せを願ってる。」
「咲月さん、お願い。咲月さんがどうするにしても1度ちゃんと麗亜さんと話し合って。私はもう、言いたいことは全部言ったから。これからのことを決めるのは、咲月さんと麗亜さんだけ。産むのか殺すのか、ちゃんと決めてあげて。」
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