人間オークション ~100億の絆~
―麗亜side—
あれからまた時間が過ぎて……つわりには慣れてきた。お腹も少し大きくなってきて、私の中に新しい命がいるんだって思える。だけど幸せと不安で心がいっぱいになる。
この子を無事に産めたとしてもちゃんと幸せにしてあげられるかな…?立派に育てられるのかな……?
「ごめんね、ごめんね……。ママはあなたを産みたいわ。でも、育てていける自信がないの。」
涙が止まらない。咲月への思いとこの子への思い。どちらも大切で愛おしいの。だけどそれ以上の恐怖に負けそうになるの。
「麗亜、今話せるか?」
名前を呼ばれた気がしてドアの方を見ると咲月がいた。久しぶりに見る姿。
「咲月…?どうしたの……?」
「お前に…どうしても聞きたいことがあって来た。」
聞きたいこと……赤ちゃんを産みたいかどうか?中絶しないのかどうか?
何を聞かれるのかが怖くて…何も言えない。きっと咲月はこの子を産むことを望んでくれない。
「お前は俺を愛してくれているのか…?」
「え……?」
「命(みこと)に聞いた。お前が俺のことを愛してるって言ったって。でもそれが本当だとしたら何でだ?且功のことが好きだったんだろ?それなのになんで成り行きで付き合った俺なんかを……俺みたいなクズを愛してるなんて言うんだ。」
「たしかに…最初はなんとなくで付き合ったわ。且功さんと命(みこと)にしたことで許せないこともあった。また2人を傷つけるようなことをしようとしたら今度こそ許さない、2人を守るためにあなたと付き合おうと思った。だけどね、付き合っていくなかで、一緒にいることで分かったこともあったわ。あなたはクズなんかじゃない、本当はとても面倒見が良くて一途だということ。あなたの優しさに気づけた。だからあなたとの未来を考えるようになった。命(みこと)のことを好きだったあなたの目を私に向けるなんて難しいと思った。いつも見ているのは私じゃない。身体だけの関係でもあなたが私に触れてくれるのが嬉しかった。抱き合ってる時間だけはあなたを独り占めしてるんだって思えたもの。ねえ、咲月、私もあなたに聞きたいことがあるの。」
「聞きたいこと…?」
「命(みこと)がいないから言えることだけど……愛がない付き合いだったら、なんで避妊をしないで抱いてくれたの?あなたも私も子供ができる仕組みは分かってる。子供を…家族をつくらない関係ならどうして、赤ちゃんができるようなことをしたの?」
「それは……」
「私はあなたを愛しているからそれを受け入れた。あなたの本心を聞かせて。」
私がそう言うと咲月は戸惑うような顔をした。私のことをただの性欲処理の道具だって思ってたから、面倒だったから。そんな答えが返ってきても私は怒らないし悲しまない。そう、覚悟を決めていた。それがなんとなくで付き合った私たちの末路だから。
そう、自分に言い聞かせた。
「仕方…ないだろ。抱いてる時のお前が…可愛かったから。あの瞬間だけは……俺だけの女で、俺を感じてくれて……幸せだと思ったんだから。」
「そう、思ってくれていたのね。嬉しいわ。」
「嬉しいってお前バカじゃないのか?妊娠させられたんだぞ?愛のないセックスでできた子供なんだぞ。それなのに本気で産む気なのか?」
「ねえ、咲月。ここに座って。」
そう言って私のベッドに座るように咲月を促す。素直に私の言うことに従い隣に座ってくれる咲月。
「ねえ、手を貸して。」
「手…?」
「私はね、こうしてあなたと手を繋げるだけでも幸せなの。一緒にいられるだけで嬉しい。ずっと心がドキドキするの。」
「俺はドキドキなんて…しない。」
「本当に一途というか、もう強情ね。ねえ、私のお腹を触って。」
「お腹って…」
「いいから。」
咲月が私のお腹に触れたときお腹の中で何かが動いた。それは紛れもない愛しい鼓動。
「ねえ、今感じた?最近ね、お腹を蹴るようになったの。あなたとのあいだにできた愛しくて大切な子。あなたが私を愛してくれなくても、私はこの子を愛すわ。愛するあなたとの子だもの。ぬくもりを感じたいの。あなたとの思い出を大切にしたいの。」
「この子は……ちゃんと愛されるのか?」
「ええ、あなたが愛せないのなら私があなたの分まで愛す。生まれてよかったって思えるくらい幸せにしてあげる。本当はあなたと一緒に育てたいわ。でもこれは私の我が儘だから。押し付けるようなことはしない。だから、どうしたいのか、ちゃんとはっきりと教えて。」
「言っておくけど俺は愛し方なんて分からないぞ。」
「うん。」
「きっとひどいこともするし言葉にもする。」
「うん。」
「子育てなんてできるような立派な人間じゃない。」
「そうね。でもそれは私も同じよ。分からなくて当然よ。だって私もあなたも初めての体験。親になるっていうのは分からないことだらけ。それでも、この子を少しでも……大切にしたいと思えれば…思えるようになればきっとそれはもう立派な親なのよ。支え合って頑張りましょう。私があなたに持ってほしいのはこの子を作ってしまったという責任じゃない。どうしたら、この子も、私たちも幸せになれるのかってこと。もちろん、命や且功さんもね。」
「わかったよ。俺の負けだ……お前が産みたいなら産めばいい。でも1つだけ決めさせてほしいことがある。」
「なに?」
「この子に、つけたい名前がある。」
あれからまた時間が過ぎて……つわりには慣れてきた。お腹も少し大きくなってきて、私の中に新しい命がいるんだって思える。だけど幸せと不安で心がいっぱいになる。
この子を無事に産めたとしてもちゃんと幸せにしてあげられるかな…?立派に育てられるのかな……?
「ごめんね、ごめんね……。ママはあなたを産みたいわ。でも、育てていける自信がないの。」
涙が止まらない。咲月への思いとこの子への思い。どちらも大切で愛おしいの。だけどそれ以上の恐怖に負けそうになるの。
「麗亜、今話せるか?」
名前を呼ばれた気がしてドアの方を見ると咲月がいた。久しぶりに見る姿。
「咲月…?どうしたの……?」
「お前に…どうしても聞きたいことがあって来た。」
聞きたいこと……赤ちゃんを産みたいかどうか?中絶しないのかどうか?
何を聞かれるのかが怖くて…何も言えない。きっと咲月はこの子を産むことを望んでくれない。
「お前は俺を愛してくれているのか…?」
「え……?」
「命(みこと)に聞いた。お前が俺のことを愛してるって言ったって。でもそれが本当だとしたら何でだ?且功のことが好きだったんだろ?それなのになんで成り行きで付き合った俺なんかを……俺みたいなクズを愛してるなんて言うんだ。」
「たしかに…最初はなんとなくで付き合ったわ。且功さんと命(みこと)にしたことで許せないこともあった。また2人を傷つけるようなことをしようとしたら今度こそ許さない、2人を守るためにあなたと付き合おうと思った。だけどね、付き合っていくなかで、一緒にいることで分かったこともあったわ。あなたはクズなんかじゃない、本当はとても面倒見が良くて一途だということ。あなたの優しさに気づけた。だからあなたとの未来を考えるようになった。命(みこと)のことを好きだったあなたの目を私に向けるなんて難しいと思った。いつも見ているのは私じゃない。身体だけの関係でもあなたが私に触れてくれるのが嬉しかった。抱き合ってる時間だけはあなたを独り占めしてるんだって思えたもの。ねえ、咲月、私もあなたに聞きたいことがあるの。」
「聞きたいこと…?」
「命(みこと)がいないから言えることだけど……愛がない付き合いだったら、なんで避妊をしないで抱いてくれたの?あなたも私も子供ができる仕組みは分かってる。子供を…家族をつくらない関係ならどうして、赤ちゃんができるようなことをしたの?」
「それは……」
「私はあなたを愛しているからそれを受け入れた。あなたの本心を聞かせて。」
私がそう言うと咲月は戸惑うような顔をした。私のことをただの性欲処理の道具だって思ってたから、面倒だったから。そんな答えが返ってきても私は怒らないし悲しまない。そう、覚悟を決めていた。それがなんとなくで付き合った私たちの末路だから。
そう、自分に言い聞かせた。
「仕方…ないだろ。抱いてる時のお前が…可愛かったから。あの瞬間だけは……俺だけの女で、俺を感じてくれて……幸せだと思ったんだから。」
「そう、思ってくれていたのね。嬉しいわ。」
「嬉しいってお前バカじゃないのか?妊娠させられたんだぞ?愛のないセックスでできた子供なんだぞ。それなのに本気で産む気なのか?」
「ねえ、咲月。ここに座って。」
そう言って私のベッドに座るように咲月を促す。素直に私の言うことに従い隣に座ってくれる咲月。
「ねえ、手を貸して。」
「手…?」
「私はね、こうしてあなたと手を繋げるだけでも幸せなの。一緒にいられるだけで嬉しい。ずっと心がドキドキするの。」
「俺はドキドキなんて…しない。」
「本当に一途というか、もう強情ね。ねえ、私のお腹を触って。」
「お腹って…」
「いいから。」
咲月が私のお腹に触れたときお腹の中で何かが動いた。それは紛れもない愛しい鼓動。
「ねえ、今感じた?最近ね、お腹を蹴るようになったの。あなたとのあいだにできた愛しくて大切な子。あなたが私を愛してくれなくても、私はこの子を愛すわ。愛するあなたとの子だもの。ぬくもりを感じたいの。あなたとの思い出を大切にしたいの。」
「この子は……ちゃんと愛されるのか?」
「ええ、あなたが愛せないのなら私があなたの分まで愛す。生まれてよかったって思えるくらい幸せにしてあげる。本当はあなたと一緒に育てたいわ。でもこれは私の我が儘だから。押し付けるようなことはしない。だから、どうしたいのか、ちゃんとはっきりと教えて。」
「言っておくけど俺は愛し方なんて分からないぞ。」
「うん。」
「きっとひどいこともするし言葉にもする。」
「うん。」
「子育てなんてできるような立派な人間じゃない。」
「そうね。でもそれは私も同じよ。分からなくて当然よ。だって私もあなたも初めての体験。親になるっていうのは分からないことだらけ。それでも、この子を少しでも……大切にしたいと思えれば…思えるようになればきっとそれはもう立派な親なのよ。支え合って頑張りましょう。私があなたに持ってほしいのはこの子を作ってしまったという責任じゃない。どうしたら、この子も、私たちも幸せになれるのかってこと。もちろん、命や且功さんもね。」
「わかったよ。俺の負けだ……お前が産みたいなら産めばいい。でも1つだけ決めさせてほしいことがある。」
「なに?」
「この子に、つけたい名前がある。」