人間オークション       ~100億の絆~
―1年後—

「おぎゃあああ!」
「はいはい、大丈夫よ。ママはここにいるわ。」

あれから時は流れて、咲月さんと麗亜さんの赤ちゃんが生まれた。なんと3250グラムの元気な女の子。私は生まれる瞬間には立ち会えなかったけど、咲月さんが言うにはこんなにも感動的な思いをしたのは初めてだったらしい。


「麗亜、代わるよ。夜泣きで全然眠れてないだろ?」

「ありがとう咲月。ミルクの用意したら少し寝るわ。」


「かわいい!この子がみことちゃん。」
「ええ、そうよ。命(みこと)からしたら姪っ子ってことになるわね。」
「姪っ子?」

「麗亜と命(みこと)は一応血が繋がっているだろ?自分のきょうだいが産んだ子供のことは男なら甥っ子、女なら姪っ子って呼ぶんだ。」


「それじゃあ、この子も私の家族?」

「ええ、そうよ。」

咲月さんと麗亜さんはこの子の名前を頑張って決めようと思ったみたいだけど、納得のいく漢字がなかったみたいで、ひらがなで『みこと』ちゃんになった。



「こんなに小さいのにどこからそんな大声が出るんだ。」

「且功さん、ごめんなさいね。毎晩みことが泣いて。」

「いや、それは別に構わないんだが、その、僕にも貸してみろ。」
「貸してみろって、ものじゃないんだから……」


且功も赤ちゃんが生まれてからどうも興味を持ち始めたみたいで、みことちゃんのことをよく見ている。





「あ、且功が抱っこしたら泣き止んだな。」
「赤ん坊でも分かるんだな、人望が。」

「命(みこと)も、これなら安心ね。且功さんならきっと素敵なパパになってくれるわ。」
「うん、将来が楽しみ!」



「あ、咲月、みことを返す」

「だから返すってものじゃないんだから……。」



「僕から皆に…命(みこと)に伝えたいことがある。」




そう言って且功が片膝をつき、私の手を取る。



「命(みこと)、16歳になったら僕と結婚してほしい。ただ如月家になってほしいんじゃない。僕とこれからの未来を一緒に生きてほしい。咲月と、麗亜、みことが証人だ。僕から命(みこと)へのプロポーズの。」



「まあ、且功さんったらそんな恥ずかしいことするようになったのね。」

「まさか且功が命(みこと)に跪く瞬間に立ち会えるとはな。」


「証人、うるさいぞ。命(みこと)、返事は?」


「うん、私、長月命(ながつきみこと)は、16歳になったら如月且功(きさらぎかついさ)と結婚します。家族になってこの家をたくさんの笑顔でいっぱいにしようね。絶対に且功の傍を離れないよ!命(いのち)ある限り!」
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