人間オークション       ~100億の絆~
トラックのエンジン音が止まると荷台の鍵が解かれ扉が開き眩しい光が差し込んできた。
でも、その光は太陽のような自然の光ではなく白く目が灼けてしまいそうなほどの明るさをもった照明だった。ここが何なのか、何処なのかを聞くまでもなく1人1人檻の中に入れられる。私たちが入れられた檻の周りには大きなカーテンのようなものがついていてその向こうに何が待っているかは分からない。


だけど、何があるのかはたったの一言で理解できた。



「それでは、これより人間オークションの始まりです!」




カーテンだと思っていたものは幕で、少しずつ上がっていく。私たちが入れられた檻はオークションのためのステージでそのステージを見ている人たちは皆、顔に仮面をつけ不気味な笑みを浮かべている。




なんて気味の悪い…悪趣味なものだろう。私たちはこれから何をさせられ、誰に買われるのだろう。




「本日のオークションの参加者となる生贄は計8名。性別は両性4名ずつ。使用人として雇うもよし、玩具として使うもよし、奴隷としてどのような用途にもご利用いただけます。」





どのような用途にも……さっき里香さんが言っていた酷い目に遭うということ。皆が恐ろしいと思ったこと。それをこんなにも簡単に言葉にし、それを嘲け笑う人ばかり。





なんて汚れた人間たち。





「まずは使用人としての素質・価値があるかをご覧いただきましょう。これから生贄の方々には皆様からのリクエストに応えていただきます。もちろん、高い評価を得られた方にはそれ相応の価値が付き、低い評価の方には使用人としての価値はつかない。」



それなら、何もせず低い評価を得れば買われることもなく酷い目に遭うこともなく終われる。


でも、そう思った私の考えは簡単に打ち砕かれた。




「言い忘れていましたが、この人間オークションでの買われる立場は各リクエストでの評価が低ければ低いほど下がっていきます。使用人としての価値があれば使用人、玩具としての価値があれば玩具。何も価値が無ければ奴隷となる。そして奴隷の中でも最も価値が無ければ性奴隷や家畜以下となる。」





司会者の言葉で震えあがる子、泣き叫ぶ子、吐き出す子。恐怖を与えられたうえでの絶望が私たちの頭を支配する。





「本日の生贄は活きが良いですねえ。ですが決して逃げ出そう……などと考えないように。価値すらつかず逃げだしたらあなたの家族が次の生贄となります。大切な家族を同じ目に遭わせたくはないでしょう…?」


「いい大人がこんなことして何が楽しいのよ!」





あまりの怒りと憎しみで気づいたらそう、叫んでいた。私が叫ぶと先ほどまでの賑わいが鎮まり、私へと視線が集まった。




「どうしましたか、6番さん。」

「金持ちだからってやっていいことと悪いことの区別もつかないの!?そんなに人を傷つけて、怖がらせて何が楽しいのよ。大人だからって子供に何をしてもいいなんて……」



「面白いからですよ。」




は…?今、この人なんて言ったの…?人を傷つけることが面白い…?





「楽しいんですよ。人は自分よりも劣る者がいると安心し安らぐことができる。お金があってもただ生きているということはとても退屈で勿体ない。だから楽しさを感じられる玩具を買う。簡単でしょう。」



「人の命(いのち)を何だと思ってるのよ。あんたたちだって自分がもし私たちみたいな立場になったら怖いでしょう?嫌でしょう?」




「そんなことありませんよ。だって私たちのような暇人はあなたたちのような生贄がいる限り、何も変わらず平和に暮らせるんですから。さあ、このままでは興が冷めてしまいますよ。あなたもこれ以上口を開いていると奴隷以下になりますよ。たとえ、招待状枠だとしても……。」



たしかにこれ以上話しても互いに何も得はない。それに私のせいで他の子たちも酷い目に遭わされるなんて…そんなの許さない。

「分かった……。」
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