人間オークション       ~100億の絆~
―且功side―

あれからもうすぐ1週間経つが一向に命(みこと)が謝ることはない。それどころか咲月と仲良さげに話をしている場面に遭遇する。そのたびに命(みこと)は焦ったような顔をして逃げようとする。



まさか咲月が“あのこと”を言ったんじゃないだろうな……。


「……且功様、お呼びですか?」
「ああ。お前に聞きたいことがある。最近命(みこと)と仲良さげに話しているが何があった?命(みこと)は何故僕の顔を見て逃げようとする?」


「……そんなこと、俺に聞いてどうするの…?」
「命(みこと)を処分しようとしていたやつが何事もなかったかのように命(みこと)と仲良く話すなんておかしいだろ。」

「……妬いてるの…?」

「そういうことを言ってるんじゃない。何故命(みこと)を処分するのをやめた…?」
「……そりゃあ、且功の命令だから……?」


咲月が透かしたような笑みを見せる。確かに僕の玩具だとは言ったが、それが咲月が納得できるような理由には思えない。時折見えた黒く濁ったようなオーラも減っている気がする。


「く……命令だ。今日から命(みこと)は僕専属のメイドにしろ。」
「でもお仕置きして口きかないんだろ?」
「僕の命令は絶対だ!いいか、後で僕の部屋に戻るよう命(みこと)に伝えろ。」
「自分で伝えれば?」


「僕に詫びろって言うのか!?」
「……たしかに俺はマイペースで相手を自分のペースに引きずり落とす且功が好きだけど、さすがに今回のことは大人気ないと思うよ。」

「なんで急に命(みこと)の肩を持つようになった。命令だ、答えろ!」

「……命(みこと)が謝る必要がどこにある……?」
「お前今なんて……」


「み・こ・と。そう言っただけだよ?」

「僕に逆らうならお前なんて」



「……解雇でもいいよ……?俺は。そしたら命(みこと)と二人で出ていく。」
「なんでだよ……なんで皆僕から離れていくんだ!」



「それは、且功が自分から近づこうとしないからだよ。」



涼しげな顔をして部屋を出ていく咲月。何故僕が頭を下げなければいけない。僕の玩具が僕に歯向かったんだ。悪いのは命だろう。



『二人で出ていく。』




胸にある何か分からない感情と共に僕は部屋を駆け出した。
< 33 / 113 >

この作品をシェア

pagetop