人間オークション       ~100億の絆~
「なんだって!?」

「だから、屋敷を壊すことにした。」
「は!?そんなこと勝手にできるわけ……」

「咲月、お前には僕の生い立ちの全ては言ってなかったな。僕の両親は……もうこの屋敷には帰ってこない。僕はこの屋敷と金と共に棄てられた身だ。」
「棄てられたって……じゃあ今までの屋敷の維持費や生活費はどうやって……。」


「お父様が僕に渡した手切れ金もあるがこれでも仕事はしていたからな。」
「俺たち使用人は解雇で且功は命(みこと)と幸せに過ごすってか……そんなもの納得できないだろ。」

「まあ話は全部聞けって。屋敷は壊すが建て直すだけだ。もちろん住むのは僕と命(みこと)と咲月。今まで住み込みで働いてくれていた使用人たちには今までと同額もしくはそれ以上の稼ぎのある仕事を紹介し辞めてもらうことにした。」

「辞めてもらうことにしたって、そんな簡単には……」

「いや、もうすべての使用人に許可は得ている。建て直す間もここで生活はできるし何の問題もないだろう。」
「じゃあ麗亜様はどうする!?」


「それが一番面倒でな……神無月家は婚約解消してくれそうなんだが麗亜が折れてくれない。それに……」
「……それに……?」

「建て直す間、ここで暮らしてみたいとさ。」

「悪夢だ……。屋敷の人の数が減るとはいえ仕事が全部俺に回ってくるというのに……麗亜様の面倒まで見るとは……。」
「おそらく人の数は増えるぞ。」

「は!?だって使用人には辞めてもらうって……。」

「僕のサイドビジネスとして、人間オークションのスポンサーになろうと思う。」

「……まさかまた新しい子供を…。」

「買うわけじゃない。人間オークションを暴いてやろうと思うんだ。」
「暴く……?」

「どうやら人間オークションは金や仕事がない親が子供を売って金に換えるパターンが多いらしい。ところが親がいないはずの命(みこと)には招待状まで来たという。おかしいと思わないか…?家も家族も無かった命(みこと)が人間オークションに参加できたこと。」

「……つまり、命(みこと)の親は本当はどこかで生きている…?」

「その可能性はゼロではないが命(みこと)の話を聞く限りはあり得ない。これはあくまで僕の中の仮説だが、誰かが命(みこと)のことを狙っていたんじゃないかと思う。もしくは命(みこと)が生活をしていた場所の近くにいた人が狙われていたか……。」

「……それを暴くって……?いくら如月家のブランドがあるからってそんな危ない橋を渡るなんて……。」

「それは僕も考えた。だけど、それ以上にこうも思った。人間オークションなんてあんな悪趣味なものが開催できるということは強力なパトロンがついているはず。そいつを味方に……いや、蹴落とす方が気持ちいいか。人間オークションが行われている本当の目的が暴ければ如月の…いや、僕の立場は強力なものになる。まあ、暴くと言っても最初は命(みこと)に話を聞いて探るしかないけどな。」

「人間オークションの正体を暴いて子供たちを助けるってこと……?且功にそんな一面があるなんて俺は驚きだけど…?」

「助ける……?そんな綺麗なものじゃない。人間オークションを利用して復讐してやるんだよ。人間オークションで賭けられる子供たちも僕も1つだけ同じ思いを持っている。それは、親への憎悪だ。」

「……てっきりこの間のことがあったからそんな悪い顔する且功を見るなんてこともうないと思ってたけどね。」
「やっぱりこの間のことはお前が黒幕だったか。命(みこと)にあんな真似させて……。」

「……怒った?」

「いや、おかげで目が覚めたよ。僕はなんて小さな世界で生きていたんだろうって思った。妾だからと人生を踏みにじられ、疎まれ怯えていた自分はなんて弱かったんだろうって。お前も僕も命(みこと)のおかげで過去との決別ができた。なら、今度は僕たちが命(みこと)のために何かすべきだろ…?」


「……ククク。」
「何を笑ってる…?」

「……いや、やっぱり且功は優しいって思っただけだよ。」
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