人間オークション       ~100億の絆~
「何なのよ、これ。」
「麗亜さんにはこの屋敷にいる間は私とルームシェアをしてもらいます。」

「なんであんたみたいなのと一緒に生活しなきゃいけないのよ。私は神無月家の令嬢よ。部屋なんて自分だけの部屋があって当たり前、使用人だって何人もつくのよ。」
「でもここは且功の屋敷です。嫌なら出て行って。」

「……分かったわよ。」


且功の名前を出すと大人しくなる麗亜さん。使用人や自分の部屋がないことは嫌だけど且功を失うことの方が嫌だってことなのかな…?


「見てないで少しは手伝いなさいよ。」
「人に手伝ってほしいときは、お願いしますって言うんです。」
「ちんちくりんの分際で私に口答えする気!?」

「私が何であろうと人に何かしてもらうときは『お願いします』と『ありがとう』を忘れてはダメです。私も最初はお願いしますって言えなかったです。何かをお願いすることなんてなかったし、ありがとうっていう後のお礼しか言えなかった。でも且功が教えてくれました。教えてほしいときは教えてくださいって言うこと。そうすればちゃんと教えてもらえます。」

「そんなもの言わなくたって皆私のためにしてくれるわ。私のことを見て察してくれるのよ。あんたがおかしいのよ。」

「これが普通なんです。『お願いします』『ごめんなさい』『ありがとう』、こういう言葉をお互いに言ってコミュニケーションを取るんです。だって、えばってばかりいる人と一緒にいたいとは思わないでしょう?」

「絶対にあんたなんかにお願いなんかしないわ。いいわよ、自分でやるから。」

「私はこれから昼食の準備をするのでこの部屋で好きに過ごしていてください。」
「準備って、あんたが作るの!?この屋敷には使用人たちがいたでしょう!私はフランス料理の気分なのよ。」

「今この屋敷にいるのは且功と咲月さんと私だけです。且功は仕事をしていて咲月さんと私が家のことをやってます。今日の貴女はお客様だから何も言いませんが、もしこれからこの屋敷に住むんだったら貴女にも家のことをやってもらいます。」
「あんたになんで命令されなきゃいけないのよ!且功さんと会わせて!」
「今且功は仕事で忙しいです。後でにしてください。」
「私が呼んでいるのよ。早く連れてきて!」
「麗亜さんこそ私に命令しないで!且功は麗亜さんの玩具でも道具でもない。やらなきゃいけないことがあって、忙しいの。皆が皆麗亜さんの都合に合わせられないの。」


麗亜さんの態度や言葉にムカついた。きっと私だって且功からしたら迷惑なこともしていて人のことを言えるような立場じゃない。だけど……何でもかんでも自分の思い通りにしようとする麗亜さんの我が儘に且功を巻き込まないでほしい。そう、思った。



「命(みこと)、廊下にまで声が聞こえてるぞ。」
「ごめんなさい……。」

「且功さん、ご機嫌よう。相変わらずこのちんちくりんを飼っているんですね。私、私たちのこれからのことを話したくて来たの。お話、できるわよね…?」

「僕からも話したいことはある。僕の部屋へ案内する。命(みこと)は昼食の準備に入ってろ。」
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