人間オークション ～100億の絆～

Episode10

且功と麗華さんの会話についていけない私。でもなにか怖く恐ろしい話なのだけは分かってくる。

「この子は…本当は私の娘なのよ。私と血のつながった正真正銘の親子。」

麗華さんと私が…親子…？どういうこと…？

いきなりのことで頭がついていかない。麗華さんと私が親子なら麗亜さんと私は姉妹ってこと…？だけど麗亜さんは何も言ってなった。

「そのお顔は、そこまでは知らなかったという感じかしら、如月さん。命(みこと)ちゃんはね、私が愛してしまった男性との間にできた子なの。本当に心から愛していた素敵な人との子。」
「つまり愛人との間に生まれたのが命(みこと)ってことですか？このことを御当主は…？」

「悲しいことにバレちゃったのよ……愛がないから私は他の男性と愛し合ったのに、そういうところだけは敏感で……本当は産むなんてこと許されなかった……でも、私にとって愛のある相手との子供でどうしても産みたかった。だから、理人さんと約束を交わしたの。もし産んでも一切干渉もせず慎ましく生活させるなら産んでもいいと。だから、産んでから見ず知らずのホームレスに彼女を預けたの。でも、私は納得ができなかったわ。ホームレスに預けて名前も付けさせるだなんてそんなこと子どもを捨てるようなものだから。だから、あの人の実家に住まわせた。さっき、命(みこと)ちゃんが言っていた百合おばあちゃんよ。あの人はね、私が愛した人のお母様なの。命(みこと)ちゃんが産まれた経緯を知った百合さんは命(みこと)ちゃんのことをとても不憫に思っていたわ。偽物の両親と貧しい暮らしをさせられ、事実も隠されたまま生きていく日々。当然百合さんからは何度も連絡がきたわ。両親役の2人が死んだときも、1人になってしまっても強く生きようとする命(みこと)ちゃんの様子を。だからね、私も考えたのよ。実の娘として迎えることができないなら命(みこと)ちゃんを養子として迎え入ればいいって。」


私が両親だと思っていた人たちは親じゃなくて、百合婆ちゃんは私の本当のお父さんの親で、麗華さんが私の本当のお母さん。

そして今、私は麗華さんに養子にならないかと言われている。


それだけしか分からない。だけどもう頭の中がパンクしてしまいそうなくらいのたくさんの真実。

「命(みこと)を手に入れるために人間オークションを企てたんですか？」
「あら、そこまでご存じだったの…？そう、最初から命(みこと)ちゃんを探すために人間オークションのパトロンになったのよ。でも最初はとてもじゃないけど見ていられなかった。何とも思わない子たちをオークションで買う気になんてなれないしつまらないビジネスでしたわ。でも、続けていると幸せなことも訪れる。百合さんがようやく命(みこと)ちゃんを私に返してくれる気になったの。でも普通に引き渡すということは神無月家のためにもできなかった。だから人間オークションを通して手に入れようと思った。」
「それで招待状を渡したんですね。命(みこと)が参加するように。でも、僕が命(みこと)を競り落とし邪魔をしてしまった。」
「ええ、100億だなんて誰が言ったのかと思ったら貴方だった。ただでさえ理人さんに無断で使える金額でないうえに、娘の婚約者だなんて……だから何もできなかったのよ……。」

「麗華さん、貴女は最低な人間です。もう命(みこと)と僕は帰らせていただきます。もう、この家に来ることもないでしょう。行くぞ、命(みこと)。」

「いいえ、如月さん、あなたは必ずここに来ることになるわ。必ずね。」