人間オークション       ~100億の絆~

Episode11

「はい、そこでターン。テンポが遅れてるわよ、命(みこと。」

麗亜さんとの同居が始まってから勉強やマナーに加えて毎日ダンスレッスンが加わった。且功のレッスンも地獄だったけどそれとは比べ物にならないくらい麗亜さんのレッスンはスパルタ。終わるのが夜遅くまでになることもあるくらい。


「だって、こんなにかかとが高い靴履いたことないもん!動きにくいよ。」
「だから常日頃から履き慣らすよう言いましたでしょう?せっかく且功さんに家の中でヒールを履く許可を頂いたのに、貴女、またサボりましたわね?」


麗亜さんが来てから私は1つ狡いことを覚えた。嫌なことはサボるということ。咲月さんは程よくやれと言ってるし且功もやりたいときにやれと言ってるからその言葉通りにしているだけだけど、麗亜さんはなかなか許してくれない。


「だって家の中で靴履いたら転ぶもん。それに洋服もスカートばかりになったから歩きにくいし。」

「それで本当に立派なレディになれるのかしら?」
「なんで私が立派なレディなんかに……。」


「女性は皆憧れるものよ。刺繍やダンス、お茶会。人との交流は大人の女性の嗜みですもの。」

「別に私は普通の女の子でいいのに……。別にレディになんてならなくても今のままで幸せだよ?」
「そうね、貴女はまだ14歳だものね。せいぜいお子様らしくレッスンに取り組みなさい。」


「麗亜さんは16歳だよね……私もあと2年で麗亜さんみたいになるのかな?」

「まあ、今の貴女には無理でしょうね。言い訳、サボり、悪いことをどんどん覚えているようですので。でも、命(いのち)ある限り頑張る精神、それを失わなければきっと素敵なレディになれますわよ。」


麗亜さんはが正式にここに住むようになってからなにかが変わった。

何が?と聞かれると答えるのは難しいけど、なんというか、前のように人を見た目や態度だけで差別をしなくなった気がする。それにたまに穏やかな顔で麗亜さんは笑う。その分怒ったときの顔も怖いけど……。



「ほら、続けるわよ。」
「は~い。」
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