人間オークション       ~100億の絆~
咲月の嘘でどうにか命を眠らせてから静かに病室を出た。

「且功さん……大丈夫…じゃないですよね…。」

「大丈夫だ……僕にとっては命(みこと)が生きていてくれるだけで構わない。それに願ったんだ、神様に。命(みこと)が死なずにすむならこの先僕はもう幸せになんてなれなくていいって。だから、もう、いいんだ。」

「さっき看護師さんからこれからのことを聞いたけど、念のため最低でも2週間は入院生活になる。この状態では基本的には俺が命(みこと)の面倒を見ることになる。」

「僕は仕事をするだけだ。何かしているほうが気も紛れるし命(みこと)のためだと思えばなんだってできるさ。」

「麗亜、お前はどうする?」
「私はさきほど、お父様と最後の話をしてきました。もう神無月家には戻らず、貴方たちと生きると。だから、私も命(みこと)の面倒は見れるわ。」


たしかに今は命(みこと)の回復を願うしかない。私にできることなら何でも協力する。



でも、且功さんは…?命と会うこともできず仕事をして気を紛らわせて……命(みこと)が記憶を取り戻すことをずっと信じ続けていかなくてはいけないの……?



「且功さん、必ず貴方のために命(みこと)の記憶を取り戻します。だからどうか……命(みこと)が悲しむようなことだけはしないでください。」

「そうだな……今の僕は命(みこと)の近くにはいられない。だから命(みこと)のことは2人に任せる。」
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