人間オークション       ~100億の絆~
「あ、麗亜さん、来てくれたですね!」
「貴女、せっかく言葉が上手になってきたのになんでまた敬語とタメ口が混ざっているのかしら?」

「なんだかこのほうがしっかり来るです。そういえば今日は麗亜さんに聞きたいことがあったです。」


もしかして、且功さんのことを思い出したの…?




そう安堵した私の心はその後の命の言葉に打ち消された。

「麗亜さんの婚約者さんが且功さんなんですね!どんな人ですか?」


「その話…どこで聞いたの?」
「昨日、咲月さんが教えてくれたです。麗亜さんの婚約者さんだから私は且功さんのことを知らないんだってやっと理解できたですよ。でもなんで私の身体は且功さんのことを知っているのか分からなくて……」


「咲月に聞いたことは…それだけ…?」
「もう1つビックリなことがあったです。私、咲月さんと付き合ってるんです!」


なんでそんなことになっているの……?
咲月と命が付き合っている…?そんなこと…そんな事実もないのにどうして。


まさか、咲月……

「付き合ってるというのは最近のことかしら?」
「違うです!咲月さんと私はずっと付き合っていて将来を約束してるのです。」

命(みこと)の屈託のない笑顔が…私の心を締め付ける。そして咲月の目論見に……命(みこと)を利用したことに憤りを感じる。且功さんが辛い目に遭っているというのに……違う……且功さんが命(みこと)の傍にいられないことを分かってるから。だから……咲月は嘘をついたんだわ。決してバレることが無いと思って。

「貴女は…咲月のことが好きなの?」
「はい、好きですよ!お付き合いをしているから私の面倒を見てくれているんだって分かったし、大切にしたいです。」

「命(みこと)……お願い。それだけはやめて。」
「やめるって何をですか?」

「貴女は今利用されているのよ。こんなことあってはいけない。貴女だけはこんなことをしてはいけないの。咲月と貴女は……付き合ってなんかいないの。ただ一緒に住んでいた家族というだけ。惑わされてはダメよ。」
「でも咲月さんはそう言ってたですよ。」

命(みこと)の言葉に……表情に私の心が揺さぶられる。ぼろぼろと涙が伝っていくのが自分でも分かる。これは命(みこと)が利用されていて悲しいから出る涙だけじゃない。命(みこと)には…且功さんと幸せになってほしいから……私と且功さんのことなんか思い出さなくていいから……本当の自分の愛すべき存在を思い出してほしい。

「ごめんなさい、感情が昂ってしまって……ここに今から咲月を呼ぶわ。それで貴女に真実を……全てを話してあげる。」
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