人間オークション ～100億の絆～

Episode15

「君は、人間オークションのときのことは覚えているのか？」
「たしか…百合婆ちゃんの家にその時はいたです。家っていっても、外の土地に住んでて……ある日いきなり招待状が届いたです。私は百合婆ちゃんにこれ以上迷惑かけたくなくて、人間オークションに参加したです。参加すればたとえ買い手が決まらなくても1週間分の寝床と食事がもらえるって書いてあったから。それでオークションが始まって、いろんなことをしたです。でも私はなにもできなくて…でも、命（いのち）ある限り諦めたくないから分からないなりに頑張ったです。」

「その時のことを彼はとてもよく覚えていると言っていましたよ。潔く、そして強い意志を持ち誰にも負けない、他の人にはない強さを持っていて感動したと。そんな貴女の姿に惹かれたと。」

「そんなことないです……私はただ思ったことを言ってただけです。」

「でもそういったことは誰もができることではありません。彼は、君を屋敷に連れて行った後、最初は本当にただの玩具としか思っていなかった。ただの暇つぶしと言っていました。でも、いつも懸命に生き、不屈の精神を持つ貴女に尊敬の眼差しを抱いたそうです。そして彼の中で君への認識が……感情が変わった。君と一緒に生きていけたら素敵な人生になるのではないかと。」

「そんなの大げさですよ。」
「大げさなんかじゃないですよ。彼は自分が生まれてきたことに意味を見出せたのです。そしていつの日か、彼は君に恋心を抱きました。生まれて初めて他人に興味を持ち、自ら貴女との関係を進めていきたいと願っていました。だから貴女への感謝も込めて人間オークションというものを明かそうとした。自分を変えてくれた君のために。そして人間オークションの正体を暴いたときも、その後麗亜さんが一緒に住むようになってからも君は変わらず君らしく生きていたと聞く。それだけ君には大きな価値があるんですよ。」