拾ったワンコは獣人でした。~イケメン獣人に求愛されて困っています。~
百合の告白
職員の人たちは、軽く会釈をすると、呆気に取られている私の横を素通りして、部屋の中へと入って行く。
「ちょ、ちょっと、勝手に入らないでください!
警察を呼びますよ!」
年配の職員の方が私を振り返って厳しい目付きを向けた。
「警察をお呼びして困るのは、そちらではないですか?
こちらはペット禁止の賃貸物件ですよね。
それに、人に害を為した野良犬を勝手に匿っていたとなると、それなりの責任を問われることになりますよ」
「だから、犬なんて飼ってないって言ってるでしょ?!」
私は頭に来て、つい声を荒らげてしまう。
すると、若い方の職員が奥の部屋へ続く扉を開けて、犬の姿をしたコウヤを見つけた。
「いました」
「すぐに捕獲しろ」
「だめっ、コウヤは人間なのよ! 犬じゃないのっ!!」
「飼い犬のことを家族のように扱うお気持ちは大変分かりますが、
人間に危害を加えた犬を放置しておくわけにはいかないのです」
コウヤは、最初抵抗していたが、私の方を見ると、何故か急に大人しくなって、若い職員の手でハーネスを着用させられた。
そのまま私の目の前でコウヤが連れて行かれてしまう。
追い掛けようとした私の手を誰かが背後から掴んで止めた。
百合だった。
「離して、コウヤが……!
あれは、本当に犬じゃなくて」
「<獣人>……ですよね。
やっぱり、そうだった」
百合が私の言葉尻を奪うように、驚くセリフを口にした。
はっと振り返って百合を見返す。
「え、どうして……百合、あなた<獣人>を知ってるの?」
百合は、私のその質問には答えず、無表情のまま私を見つめた。
「先輩が悪いんですよ」
「どういうこと?」
「私から純也さんまで奪おうとするから」
「……何を言ってるの?」
知ってるんです、と百合は静かに笑った。
「先輩と純也さんが付き合ってたこと。
先輩は、私に隠してたようだったけど」
私は、驚いて目を見開いた。
これまでずっと、百合は私と純也の関係を知らないで私に接しているのだとばかり思っていたのだ。
「知ってたって……いつから?」
「そんなこと、今更知ってどうするんです?
先輩がずっと私に嘘をついて、影で私の事をバカにしてたことには変わりないじゃないですか」
「そんなことっ……!
……まさか、保健所に通報を入れたのって……」
「私です。だって、許せないじゃないですか。
先輩だけが私の欲しいものを全部手に入れてしまうなんて。
たった数年早く生まれたってだけで。
純也さんだって、きっと先輩より先に私と出会っていたら、私を好きになってくれた」
私は、何か反論しようと口を開いたか、言葉が出ない。
もう何が何だかわけが分からず、力無く首を横に振った。
「今度は、私が先輩から全部奪ってあげます」
そう言って、百合は、私が今まで見たことがない別人のような顔で、冷たく仄暗い笑みを浮かべた。
「ちょ、ちょっと、勝手に入らないでください!
警察を呼びますよ!」
年配の職員の方が私を振り返って厳しい目付きを向けた。
「警察をお呼びして困るのは、そちらではないですか?
こちらはペット禁止の賃貸物件ですよね。
それに、人に害を為した野良犬を勝手に匿っていたとなると、それなりの責任を問われることになりますよ」
「だから、犬なんて飼ってないって言ってるでしょ?!」
私は頭に来て、つい声を荒らげてしまう。
すると、若い方の職員が奥の部屋へ続く扉を開けて、犬の姿をしたコウヤを見つけた。
「いました」
「すぐに捕獲しろ」
「だめっ、コウヤは人間なのよ! 犬じゃないのっ!!」
「飼い犬のことを家族のように扱うお気持ちは大変分かりますが、
人間に危害を加えた犬を放置しておくわけにはいかないのです」
コウヤは、最初抵抗していたが、私の方を見ると、何故か急に大人しくなって、若い職員の手でハーネスを着用させられた。
そのまま私の目の前でコウヤが連れて行かれてしまう。
追い掛けようとした私の手を誰かが背後から掴んで止めた。
百合だった。
「離して、コウヤが……!
あれは、本当に犬じゃなくて」
「<獣人>……ですよね。
やっぱり、そうだった」
百合が私の言葉尻を奪うように、驚くセリフを口にした。
はっと振り返って百合を見返す。
「え、どうして……百合、あなた<獣人>を知ってるの?」
百合は、私のその質問には答えず、無表情のまま私を見つめた。
「先輩が悪いんですよ」
「どういうこと?」
「私から純也さんまで奪おうとするから」
「……何を言ってるの?」
知ってるんです、と百合は静かに笑った。
「先輩と純也さんが付き合ってたこと。
先輩は、私に隠してたようだったけど」
私は、驚いて目を見開いた。
これまでずっと、百合は私と純也の関係を知らないで私に接しているのだとばかり思っていたのだ。
「知ってたって……いつから?」
「そんなこと、今更知ってどうするんです?
先輩がずっと私に嘘をついて、影で私の事をバカにしてたことには変わりないじゃないですか」
「そんなことっ……!
……まさか、保健所に通報を入れたのって……」
「私です。だって、許せないじゃないですか。
先輩だけが私の欲しいものを全部手に入れてしまうなんて。
たった数年早く生まれたってだけで。
純也さんだって、きっと先輩より先に私と出会っていたら、私を好きになってくれた」
私は、何か反論しようと口を開いたか、言葉が出ない。
もう何が何だかわけが分からず、力無く首を横に振った。
「今度は、私が先輩から全部奪ってあげます」
そう言って、百合は、私が今まで見たことがない別人のような顔で、冷たく仄暗い笑みを浮かべた。