敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
いけない、叶多くんは私を心配してくれているのに、その気持ちを無下にするようなことを言ってしまった。
それにしても、往診に来てもらえと言うのは過保護だと思うけれど。
「ごめんなさい。もし病院に行くとなっても、細心の注意を払うから心配しないで」
《ああ、そうしてくれ。じゃ、明日も早いからそろそろ休む》
「ええ。おやすみなさい」
《おやすみ》
こちらは午前九時だが、マドリードは深夜一時。叶多くんは隙間時間を見つけてマメに連絡をくれるけれど、毎回の通話自体は短く、少し物足りなかった。
彼が帰ってくるまであと半月ほどなのだから、贅沢を言ってはいけない。そうは思うけれど、体調が優れないこともあってか、なんだか気持ちが塞ぐ。
外出できない生活への欲求不満も自分が思っている以上に溜まっているのかもしれない。
タクシーで病院に行って、その帰りに少し気分転換の寄り道をするのはどうだろう。
カフェで一杯コーヒーを飲んで帰りもまたタクシーに乗れば、それほど人目に触れることはないのではないだろうか。