敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

 意外な返答だった。大学などで俺の周囲にいるいわゆる〝お嬢様〟たちは、自分を飾るためのファッションや美容、写真うつりのいい流行りの食べ物ばかりに夢中で、社会問題には無頓着。

 俺も彼女たちを飾る道具としてたまに恋人候補に選ばれたりするが、いくら見た目が美しくても中身がスカスカの女性には生憎興味がなく、試しに交際してみてもうまくいかないことばかり。

 正直、恋愛自体にあまり魅力を感じなくなっていたところだった。

 しかし目の前のお嬢様は、とても神妙な顔で会場のテーブルに並んだ料理を見つめている。食糧問題について時々自分でも考えるというのは、口先だけではないのだろう。

「勉強熱心だな」
「自分の知らない世界のことを学ぶのは好きなの。将来は翻訳家になりたくて」
「翻訳家?」
「ええ。まだ、どの言語を学ぶかまでは決めていないけど……素敵な物語を、自分の選んだ言葉で世界中の人たちと共有するって、考えるだけでワクワクしない? だから父には悪いけど、私は八束グループの駒になるつもりはないの」

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