敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
しかし、今よりずっと男性社会だった料理人の世界で過酷な修行を続けるうち、日本人女性はシェフの夢をあきらめてしまう。
トーレスさんはもちろん必死で引き留めたが、彼女の気持ちは変わらなかった。
そして彼女がレストランを辞める少し前、偶然食事に来ていた日本企業の社長が彼女の料理を気に入り家政婦として自宅で雇いたいと申し出たため、予定より早くに彼女の帰国が決まってしまう。
きちんとしたお別れができないままスペインにとり残されたトーレスさんは、失恋の傷を時間が癒してくれるのを待つしかなかった。
『それが八束グループの社長でした。まだ社長になりたてで若く、気難しそうな風貌でしたがハンサムで、若かりし私は彼に嫉妬した。もっとも彼には妻がいたので、ただの逆恨みでしかありませんが』
『では、お金の問題ではなかったと?』
『その通りです。日系ホテル側が契約金を上乗せしてきたとしても、私自身の心の問題でお断りしていたと思います。本当に申し訳なかった』