敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
包み隠さずに事情を話してくれたトーレスさんはとても感じよく、彼がホテルに店を出さなかった理由にも納得がいった。
私の父も多少絡んでいるとはいえ、トーレスさん個人の問題で出店を断ったに過ぎなかったのだ。
ホテル計画がダメになってしまった事実は今さら覆せないけれど、彼の話を聞けば、お互いを敵視することは無意味だと、父たちも気づくだろう。
それにしても、トーレスさんと恋仲だった日本人女性って、もしかして……。
実家でいつも私を安心させてくれていた、料理上手な丸い笑顔をぼんやり思い浮かべ、他人事ながら鼓動を高鳴らせる。
『事情をお話しくださってありがとうございます。もしも今彼女に会えたら、なにかお伝えしたいことはありますか?』
『そうだな……。彼女との別れはつらかったけれど、あのときに恋愛と縁を切ったからこそ、今の成功があると言える。いつか私の店に料理を食べに来た彼女に、美味しいと言ってもらえたら、すべてが報われる気がするよ』
とても穏やかな笑みを浮かべたトーレスさんに、胸がジンと熱くなる。