敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
未来への道標
叶多くんの帰国から十日ほど経った日曜日。
八束家のリビングには、私の両親、そして妙さんと泉美さん、叶多くんのご両親に弟さんの隆多さんが集まり、叶多くんのスマホをテレビに繋いで例の動画を視聴していた。
『日系ホテル側が契約金を上乗せしてきたとしても、私自身の心の問題でお断りしていたと思います』
トーレスさんがそう言ったときの父は、戸惑ったように眉根を寄せていた。しかし、すぐに体の力を抜いて、座っていたひとり掛けソファに深く背を預けた。
「……そうだったのか」
それ以上なにも言葉が出ない父に、叶多くんのお父様が席を立ち、歩み寄った。
「あの当時、トーレス氏の話にもっと耳を傾けていればよかったのに、私たちは互いにスペインの地元ホテルに契約金の情報を誰かが流したに違いないと思い込み、疑心暗鬼になっていたようですね。まことに申し訳ありませんでした」
先に頭を下げた城後社長の姿に父も慌てて立ち上がり、そっと肩に手を添える。