敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
「ふたりのこと、応援してる。たまにはお茶しましょうね。今度は友達として」
「美来様……はい、ぜひ」
ふたりでしんみりしながら話していると、「おい美来」と、ややぶっきらぼうに父が私を呼んだ。
家出同然で飛び出した私が久しぶりに帰ったにもかかわらず、しおらしくする気はないらしい。
「はい」
目元にハンカチをあてて父のもとへ向かうと、そこには叶多くんもいた。ソファに座る父と向き合うようにしてふたりで並んだ瞬間、「藤間さんから婚約破棄の連絡があった」と、ため息交じりに告げられる。
しかしそれ以上の嫌味はとくになく、父はスッと立ち上がって私と叶多くんを一度ずつ見た。
「お前たちには負けたよ。幸せになりなさい」
いつもは眼鏡の奥で厳しい色を浮かべている瞳が、今はやわらかく、穏やかな光を湛えている。
お父さんのこんな顔を見るの、何年ぶりだろう。反抗してばかりの私は親不孝だろうかと悩んだこともあっただけに、優しく背中を押してくれる言葉が、胸に沁み渡る。
「お父さん……」
「それに叶多くん。きみをまるで悪魔の子であるかのように扱い心無い言葉をかけたこと、謝らせてほしい。本当にすまなかった」