敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

 元日に訪れた八束家では妙さんが腕によりをかけたおせち料理が並び、初めて彼女の料理を食べた叶多くんも『トーレス氏と共に修行に励んでいたことにも納得です』と、大絶賛。

 母からは、昔のアルバムを見ながら私が生まれた時の話をたくさん聞かせてもらい、当たり前だけれど、私もたくさん愛されていたんだなと、今さらのように実感した。


 その翌日、今度は神楽坂(かぐらざか)にある彼の実家へと出向いた。

 都会的でおしゃれなデザインの邸宅は三階建て。一階部分がガレージで、お義父様の趣味なのだという高級外車が何台も止まっていた。

「いらっしゃい美来さん。あけおめ~」
「あけましておめでとうございます、隆多さん」

 ガレージ横の玄関で出迎えてくれたのは、八束家に集まった日以来会っていなかった、弟の隆多さん。

 城後都市開発も今はお正月休みなので、普段独り暮らしをしている彼も実家に帰っていたそうだ。

「……俺に挨拶は?」
「兄貴こそ、俺にお年玉は?」

 手のひらを上に向けて拗ねた顔をする隆多さんだが、叶多くんはぱちんとその手を軽く叩いた。

「いくつの子どもだ」

 呆れながら用意されたスリッパをはき、私を先導する。

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