敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
「結婚式はどうしようとか考えているのか?」
「いや、まだだ。日本にいられる五年の間にとは思っているけど、子どもが生まれてからゆっくり考えようかと」
優雅にワイングラスを傾けるお父様からの問いに、叶多くんがそう答える。
私たち夫婦はそこまで式にこだわっていないけれど、さんざん心配をかけてきた両親への恩返しの意味も含め、いつかは挙げたいなと想像している程度だ。
「だったら、スペインの新しいホテルができたらそこで挙げるのはどう? 素敵なチャペルもできる予定なのよ」
今まで聞き役だったお母様が、テーブルに身を乗り出した。
スペインで挙式……いいかもしれない。
私と叶多くんの縁を繋いだ思い出の土地だし、出来上がったばかりの美しいホテルは、新しいスタートを踏み出すのにもきっと相応しい。
「悪くないと思うけど、そうするとかなり時期が遅くなるんじゃないか? まだ、工事も始まっていないんだろう?」
「三年半だ。急ピッチで計画は進んでいて、間もなく着工する。だからといって突貫工事というわけではなく、隆多を中心に、八束グループ、そして工事を担当する京極建設と一体になり綿密にスケジュールを組んだ。今度こそ、つまらない行き違いをしないように何度も話し合いを重ねたうえでな」