敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
「私、ここがいい」
見た目が気に入ったのもあるけれど、両家が和解したからこそ完成できたホテルのチャペルで、叶多くんと愛を誓い合う。
それが実現したら、とても素晴らしい思い出になると思うのだ。
「そう言うと思った。俺も異存はないよ。でもまずは、このホテルをしっかり完成させてもらわないとな」
叶多くんはさりげなく隆多さんにプレッシャーをかけるけれど、本人はまったく動じずに頼もしい微笑みを浮かべた。
「そこは任せてよ。俺たちから兄貴たちへの、最大の結婚祝いだからね」
「出来のいい弟を持って幸せだよ。お年玉をやろうか?」
「ははっ。さっきのは冗談だって」
楽しい食事会は夕方まで続き、名残惜しまれつつも彼の実家をお暇する。
タクシーでマンションの前まで帰り、車を降りたところで、叶多くんが不意に頭上を仰ぐ。
周囲に立ち並ぶビルに切り取られた夜空はとても狭く、星の数も少ない。
それでも、いくつかの星が瞬いているのがしっかり見えた。