敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
「まだスペインに勤務してたとき、美来とこんなふうに幸せになることは届きそうで届かない星みたいだって思ってた」
そう言って白い息を吐きだす横顔は、どこか憂いを帯びていた。
「邪魔な許嫁はいる、両親たちは仲違いをしている……そしてなにより、美来が遠くにいたから、どうしても切ない思いが拭えなかった」
「叶多くん……」
不意に彼が見せた儚い表情に、胸がきゅっと締めつけられる。と、同時に、今こうして一緒にいられるのは、本当に幸せなことなんだと実感する。
「だけど、今はこの手にちゃんと掴まえてる」
叶多くんが私の手を取り、自分のコートのポケットに入れた。
指を絡ませてしっかりと握り合った手は、とても温かかった。
「もっと幸せになろうな、美来」
「ええ、必ず」
視線を絡ませて微笑み合った私たちは、そのまま引き寄せられるようにキスを交わした。
私たちの手の中にある星は、未来への道標。叶多くんと一緒なら、もっともっと輝かせることができるだろう。