敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

 翼には日頃から簡単なスペイン語を教えているせいか、お店やレストランでも物おじせずに自分から『¡Hola!(こんにちは)』と挨拶する。その姿は親馬鹿ながらかわいかった。

 当日は、夕方から始まる式に合わせて昼頃にホテル入りし、身支度を整える。

 まず袖を通したのは、挙式で着るプリンセスラインのウエディングドレス。本に出てくるお姫様に憧れていた私の希望で、袖がパフスリーブになっている、お姫様感の強いインポートドレスを選んだ。

 高い位置でまとめた髪にティアラを乗せ、大ぶりのパールネックレスとイヤリングをつければ完成だ。

 支度が整い、カメラマンに何枚か写真を撮ってもらったところで、ブライズルームのドアがノックされる。

「ママー!」

 ドアの向こうから元気な翼の声がする。翼もカッコよくしてもらったかな?

「どうぞ」

 返事をして出入口のそばにいた式場スタッフにドアを開けてもらうと、翼が駆け足で飛び込んできた。

 半ズボンのタキシードに蝶ネクタイ、スタイリング剤で七三に分けられた髪型がちょっぴり生意気で、とびきりかわいい。

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