敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

「そっか……そうよね。この後ずっと剣をぶら下げて歩くのも、邪魔になるものね……」
「そんなに残念がるなら、武器の装飾にも使われている象嵌(ぞうがん)細工のアクセサリーはどうだ? ブローチやペンダントは女性に人気だよ」
「アクセサリー? 見たい!」
「急に元気になったな。じゃあ、広場に戻ろう」

 彼に連れて行ってもらった象嵌細工のお店には、アクセサリーだけでなく置時計や皿、花瓶、壁飾りなど、多彩な商品が並んでいた。

 私が気に入ったのは、黒地に金で装飾されたアラベスク模様のバレッタ。華やかな柄だけど色が落ち着いているので、普段使いもできそうだ。

「私、これにする」
「じゃあ俺は、こっちのタイピンにしよう」

 隣で商品を眺めていた叶多くんは、当然のように私と同じ柄のタイピンを手に取っていた。

 そして私の手からバレッタを回収すると、店主に「La quenta por favor.(会計お願いします)」と声をかけた。レジカウンターへ向かう彼を慌てて追いかけ、Tシャツの背中を引っ張るようにギュッと掴む。

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