敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~
「これからも、他の男なんて知らなくていい」
くいっと顎を引き上げられ、目を逸らすなと言うかのように、鋭い瞳に射貫かれる。
「えっ?」
「俺だけ見ていろ。全部、教えてやるから」
強引なセリフを吐いた彼に、体の内側がジンと熱を持った。声を出そうにも喉がすっかりカラカラで、なんとか絞り出した声で尋ねる。
「ぜ、全部って……?」
「さぁな。それは美来次第だ」
私次第……?
それだけじゃ全然意味がわからないのに、叶多くんはパッと私から手を離し、こちらに背を向けてしまう。
突き放されたような気がしてしゅんとしていると、少し先で立ち止まった彼が、私に手のひらを差し出した。
「ほら、おいで。お腹空いただろ」
「うんっ……」
たったそれだけでキュンとして、忠犬のように彼に駆け寄ってしまった。彼と手を繋いで歩くことも最初は戸惑っていたのに、今では喜んでいる自分がいる。
男性経験はなくても、読書好きで数々の恋愛物語に触れてきた私は、この落ち着かない気持ちが本の中でなんと呼ばれているのか知っていた。
彼を困らせることになるから、声に出すことはできないけれど。
私、叶多くんのことが好きだ――。