敏腕外交官は傷心令嬢への昂る愛をもう止められない~最上愛に包まれ身ごもりました~

「じゃあ、お水を」

 彼に連れて行ってもらった星付きのレストラン、そして二軒目に立ち寄ったバルでそれぞれワインやシェリーを飲んでいたので、酔いを覚ましたくてそう言った。

「どうぞ」

 キッチンから出てきた叶多くんはグラスの水を私に手渡し、「立ってないで座ったら?」と、クスクス笑った。

 緊張しながらキャメルのレザーソファに腰を下ろすと、叶多くんもすぐ隣に座る。そして悪戯っぽい瞳でグラスに口をつける私をジッと見つめてくるので、座っていたってちっとも落ち着かない。

 ようやく飲み干した水のグラスをテーブルに置くと、叶多くんがドアの向こうに視線を投げた。

「シャワー、先に使っていいから」
「えっ、悪いわ。叶多くんお先にどうぞ」
「その間に寝室を片付けたいんだ。朝起きた時点では、女性を部屋に上げるなんて思っていなかったからごちゃごちゃしてる」
「へ、部屋に上げるって……私なら、ここで寝かせてもらうから気を遣わないで」

 ソファの座面をポンポンと叩き、恥ずかしい状況を必死でごまかす。すると、叶多くんが私の髪をそっと耳にかけ、顔を覗き込んできた。

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